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スイミング・プールのtakのレビュー・感想・評価

スイミング・プール(2003年製作の映画)
3.8
「まぼろし」「8人の女たち」と秀作が続いたオゾン監督作。フランス映画、プール、殺人・・・と聞いて、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の「悪魔のような女」を思い浮かべた方もあったのではないだろうか。しかし本作はそんな本格ミステリーじみた設定はどうでもよい。それよりも、興味と好奇心をきっかけにその人の裏側にある事実や人間関係、人そのものを知っていくことが、推理小説のようにミステリアスでスリリングだ。

 ミステリー小説家サラは、新作の執筆のため、南仏プロバンスにある別荘を訪れる。そこは出版社社長の家。小説家らしく一人でいることを好むサラだが、その家に社長の娘と名乗るジュリーが現れる。若い肉体をもてあますような奔放なジュリーの言動に苛立つサラだったが、次第にジュリーに関心を抱いていく・・・。いつしか観客もサラと共に謎めいた空気の中へと足を踏み込んでいく。淡々と進んでいく物語だが、決して目をそむけられない。

 オゾン映画に出てくる女優さんはみんな魅力的だ。他のオゾン映画でもヒロインであったランプリングとサニエ共演というだけでも惹かれる。特にランプリングが”嫌な女”から変貌を遂げる様は見事!。プールサイドで寝そべる二人それぞれの傍らに違う男が立って見つめる場面が出てくる。その対比も面白いのだけど、足先からずーっと動くカメラが不思議といやらしくないのだ。例えばロジェ・バディムの映画の舐めるような視線とは全然違う。「まぼろし」の時も書いたけど、美しく年齢を重ねるというのはこういうことなのかな、とシャーロット・ランプリングを見るといつも思う。オゾン監督の視線は、若いサニエと対比することでそれを称えているようだ。前2作程は満足できなかったりもしたけれど、美しい女性を観る喜び・・・それを満喫させてくれた2時間。やっぱり僕は女優ぬきに映画を観られない人間のようだ。
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