はる

ブラックブックのはるのレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
4.5
ドイツ占領下のオランダを舞台に家族をナチに惨殺された主人公が復讐に燃える諜報サスペンスでミステリー要素もあります。戦争映画の重厚さとエンタメ性のバランスが上手く取れていて、欲にまみれた人間の醜悪さを描きながらも映画的に楽しいと思える瞬間が沢山あります。人体破壊のような描写はあまり無いのですが、普通の映画なら見せないような部分まで見せるのがバーホーベンらしさですね。リアリストなんでしょうね。

やっぱり主人公を演じたカリス・ファン・ハウテンが素晴らしいんですよ。強く美しく激動の時代を生き抜いた女性を体当たりの演技で魅せてくれます。私この主人公凄く好きなんですよね。あらゆる状況において常にクールで、泣いたり叫んだりしない。こういう人間だからこそ生き残ることが出来るのだと思わせてくれますよね。

完全にドイツ軍が悪、レジスタンスは善という風には描かれてなくて、それぞれの善性と悪性が描かれているのがフェアな視線があって良いですね。ドイツ軍の中にも善人がいたり、レジスタンスの中にも下品な連中がいたりと人間は簡単に善悪では区別できないことが分かりますし、終戦後に主人公に対して糞尿をぶっかけた連中のシーンも立場が変わることで人間はあっという間に墜ちぶれることを生々しく描いています。

最初から最後までずっと面白い本作ですがラストシーンがこれまた凄い。金を積まれようが容赦はしない。しかもここで家族の写真の入ったペンダントを用いるのがたまりません。この前観た『ベネデッタ』といいバーホーベンの描く女性はみんなカッコよくて最高!観てないバーホーベン作品まだまだあるのでどんどん観ていきたいです!
はる

はる