びたみん

ブラックブックのびたみんのレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
4.6
戦争映画の金字塔。バーホーベンの傑作。
とにかく面白い。サスペンスに欠かさず、常に緊張感がある。裏切りにつぐ裏切り、素早い展開、決まっている画。
そして、よく観ていると、常にカメラが動いている。観客の観たいところにすぐにカメラが寄る。
映画的な映像の楽しさも事欠かない。爆発、ラブシーン、アクション。エンターテイメント映画として第一級品の出来だ。
娯楽映画としての完成度の高さもありつつ、しっかりと戦争の残酷さや、正義と悪の曖昧さを描き切っている。
戦争が終わって、物語も終わりではなく、そこからさらに残酷で悲痛な展開が続く。それを飽きさせずに魅せるバーホーベンの手腕はさすが。
戦後処理のずさんさや、正義の皮を被った人々の描写も、巧い。
そして、ロニーの存在。戦時中はナチスとして、戦後はすぐに転向し、新しい彼氏を見つける。冒頭の主人公との再会の時には、夫婦で幸せそうにしている。のらりくらりと、映画内で一番上手く立ち回っているのがロニーだ。ある意味民衆を象徴する存在で、この映画のテーマを物語っている。
バーホーベン自身の戦争体験や、思想も反映されつつ、エンターテイメントとしても一級の大傑作活劇。観ていない方はぜひ。
びたみん

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