たつなみ

ブラックブックのたつなみのレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
4.0
バーホーベンの映画の中でもずっと観たかった作品。
ナチス・ドイツ占領下のオランダが舞台とはいえ、反戦的なメッセージは薄い。
むしろそれを下敷きにして、バーホーベンが描きたいものを存分に描いているという印象。
二転三転するストーリーなので、一級のサスペンスものとして十分楽しめる。

主人公はバーホーベン作品ではすっかりお馴染みとなった『勇敢で賢い女性』。
主役のラヘル(エリス)を演じたカリス・ファン・ハウテンは本当に美しく、歌も素晴らしくて完全に魅了された。
ユダヤ人ながらナチスの将校に取り入ってしたたかに生き残る役を見事に演じている。
…だが!オッパイが思いの外小さかったのは本当に残念!ココでマイナス1点!(笑)

終戦後に”売国奴”として受ける凄まじい仕打ちは思わず笑ってしまう程ヒドい!
絶対あんな目に遭いたくないわ…。

総じて出てくる男たちは愚かで胸糞が悪いというのももはやお馴染み。
(善良な男は無力であっさりと死んでしまう)
ナチス側のフランケン中尉は最低な俗物として現れるが、一転して歌やピアノが抜群に上手いという描写があったりする。
最低なクソ野郎にもこういう意外な一面があるという描き方は実にバーホーベンらしい。
結局エリスが一番信じられた人間は利用するつもりだったナチスのムンツェ大尉だけだった…という所も皮肉が効いている。
『完全なる悪』、『完全なる正義』など無いということを絶妙なバランスで語っている。

バーホーベン監督の最新作 『エル ELLE』も非常に楽しみ(^^)
公開までにしばらくバーホーベン作品巡りをしたくなった。