逃げるし恥だし役立たず

リンカーン弁護士の逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

リンカーン弁護士(2011年製作の映画)
3.5
高級車リンカーンの後部座席を事務所代わりにロサンゼルスを駆け巡る敏腕弁護士のミック・ハラーが、多額の報酬目当てに資産家の息子の弁護を引き受けた事から始まる衝撃の顛末を描いた、マイクル・コナリー原作のベストセラー小説を映画化した法廷サスペンス。
事務所を持たず、元妻を電話番として、ロサンゼルスの掛け持ちした法廷を駆け巡る、高級車リンカーン・コンチネンタルの後部座席をオフィスとする"リンカーン弁護士"ミッキー・ハラー(ミック)(マシュー・マコノヒー)は、報酬次第で麻薬売人や売春婦を相手に司法取引を最大限に利用して罪を軽減させる戦略を得意とする異端弁護士である。検事や刑事から敵視されながらも、時には汚い手も使いながら、抜け目なく生きてきた。或る日、資産家の御曹司ルイス・ルーレ(ライアン・フィリップ)が女性への殺人未遂容疑で告発され、弁護を担当することになる。いつも通り司法取引を纏めるだけで高額の報酬が舞い込むはずだったが、頑なに無実を訴えるルイス・ルーレが司法取引を拒否し、ミッキー・ハラーの戦略に狂いが生じ始める。無実を主張するルイス・ルーレの身辺調査を進めるうちに、ミッキー・ハラーが過去に担当した事件と今回の事件との類似点が見つかり、衝撃的な疑惑が浮上する。其の事から、ミッキー・ハラーは弁護士として、父親として人生最大の危機に瀕していくのだった…
スティーヴン・キング絶賛のマイクル・コナリー原作を、ブラッド・ファーマン監督による濃密なスリル溢れるサスペンス映画。ハードボイルドでスタイリッシュなオープニングの決まり具合、いちいち御洒落な映像は流石で、ユーモアもセンス良く纏められていて、次々と癖のあるキャラクタが登場して入り乱れ、スムーズで軽快なテンポの展開に次第に惹き込まれていく。法廷内外の駆け引きに最後まで目が離せない構成が巧く、マシュー・マコノヒーの鮮やかな逆転劇が爽快で、肩肘張らず気軽に楽しめ、適度に捻りが利いた作品に仕上がっている。
マシュー・マコノヒーの演技は勿論の事、高額の報酬を吹っかけ違法すれすれの手口も使う敏腕弁護士はやや型通りな感じだが、何でもアリではなく、芯のある正義感を持った、宛らダークヒーローといった魅力的な主人公に、依頼人ルイス・ルーレ(ライアン・フィリップ)と彼の母親メアリー・ウィンザー(フランシス・フィッシャー)、調査員フランク・レヴィン(ウィリアム・H・メイシー)やランクフォード刑事(ブライアン・クランストン)、麻薬常習者グロリア(キャサリン・メーニッヒ)たち各キャラクターの書き分けも秀逸で、ラストに向けた盛り上がりも悪くない。
犯行自体の有無や依頼人の動機について言及した法廷サスペンスは多々あるが、依頼人と弁護士の関係というアイデアには只々脱帽であり、心理劇は素晴らしく、法廷劇も面白く、衝撃のラストと真実には溜飲が下がる。
屈託のない表情のライアン・フィリップに憔悴しきったマシュー・マコノヒーのにらめっこ対決!マシュー・マコノヒーも『評決のとき(1996年)』の新米弁護士から十五年で渋い敏腕弁護士に…いや随分とヤサグれたなぁ…なんだか髪型が変だし…