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姿三四郎のshingoのレビュー・感想・評価

姿三四郎(1943年製作の映画)
3.9
世間はエンドゲームで盛り上がってる中、なぜか黒澤明の初監督作品を初鑑賞。そしてその完成度の高さに脱帽。

近年の映画と比べるとカメラの動きが少なく感じるが、その分人物がよく動く。黒澤作品の最大の特徴はモブシーンの秀逸さだと思っているがこの時点でそれは完成されている。町中での喧嘩のシーンにしろ、柔道の試合のシーンにしろメインの人物以外の描写が非常に丁寧。

特に武闘大会での三四郎と村井半助との試合。若干突っ込みどころもあるが(この時代の柔道には受け身という概念がないのかなど)、三四郎に投げ飛ばされた半助を立ち上がって見守る観客達。道場の端で倒れる半助と同じく端でただ立ち尽くす三四郎。それを俯瞰するカメラは誰もいない畳を中心にスポットを当てており、この斬新なカットがやたらと美しく思わず見入ってしまう。

ただ一方で気になったのは「間」の長さ。最初の矢野正五郎を闇討ちするシーンで矢野が一人相手を投げ飛ばす度に出来る間にしても、三四郎が武闘大会で門馬三郎に投げ勝ったあと娘が三四郎をじっと睨みつける間にしてもやたらと長い。時代のせいか分からないがこの異様に長い間にはかなり違和感を感じる。

内容自体は非常に分かりやすい娯楽映画だが、戦時中にこのような作品を撮ったのはそれだけ現実が混沌としていたことを表してるようである。フィルムを紛失したという経緯にしろ。自分が観たのは79分の短縮版なのでいつか最長版も観てみたい。
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