さえぴー

シンドラーのリストのさえぴーのネタバレレビュー・内容・結末

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

大傑作。
インド映画もびっくりの長さだけれど、最後まで鑑賞した後、果たして貴方は「長い」と文句をつけることができるでしょうか?

Disc1ではシンドラーはただの実業家であった。戦争を利用し金儲けをするドイツ人だ。ナチスドイツではないため、ユダヤ人に多少の同情はあったが、彼もまたユダヤ人を自分と同じ人間として見ていなかった。まああの状況下におかれれば、誰でも我が身のほうが可愛くなるだろう。

しかしDisc2からシンドラーはユダヤ人を助けるようになる。インターミッションがあるわけではないので、はっきりとは言えないが、分けるとすればこう言える。
シンドラーは「アウシュビッツにいる両親を救ってほしい」という少女の願いを、嫌々ながら引き受けた。また記憶違いではなければ情が移ったのか、それともいい腕であったのかはわからないが、最後のリストにもこの一家は名を連ねていた。このあたりがターニングポイントとなっているとわたしは思う。

シンドラーを変えたものはなんであったのか。やはり情なのだろうか。
わたしは、クラクフの収容所でのアーモンとの出会いだったのではないかと思う。
劇中にシンドラーがアーモンを諭すシーンがあった。それによりアーモンはユダヤ人を許すことを覚えたが、長くは続かず、また理不尽な殺害を始めた。
クラクフの収容所のナチスドイツの中でも、アーモンの無慈悲さは凄まじかった。それを反面教師にして、シンドラーはユダヤ人を救い始めたのではないか。

また、ヘレンの存在も大きい。アーモンは最後までヘレンを手放そうとしなかった。シンドラーも最後までヘレンを救おうとした。ユダヤ人であるのにナチスドイツ将校に愛されたヘレンはとてもつない魅力のある女性であったのだろう。

さて、ユダヤ人を救うと決めた後のシンドラーはすごかった。ここからが見所と言っても過言ではないだろう。1100人のリストをつくり、間違えたアウシュビッツ送りにされた女性たちをも自らの財力を駆使して取り戻した。そして生産量0で戦争を乗り切った。

そしてやはり1番素晴らしいシーンはラストだ。シンドラーに命を救われたユダヤ人たちが銀の指輪をシンドラーに送る。なけなしの銀からつくったその指輪はまさに命の結晶だ。白黒映画なのに、その指輪は銀色に輝いて見えた。

さらに、シンドラーが後悔するシーン。
「車を売ればあと10人助けられた」
「バッチで2人は助けられた」
「だけどしなかった」
1100人を救った男が初めて命の尊さを実感した瞬間であった。
過剰な演出とも見てとれるが、わたしは好きだ。リアムニーソンの演技が素晴らしいのだ。演出だとわかっていても泣けてしまう。

さらにエンドロールでわたしの涙腺はとどめを刺された。
「シンドラーのリストの子孫は6000人を超える」
約6倍である。シンドラーの偉業を改めて実感した。
画面は白黒からカラーに切り替わり、救われたユダヤ人がオスカーシンドラーの墓に列をつくって1人ずつ小石を置いていく。最後に主演のリアムニーソンが薔薇をそっと置く。

「この映画を虐殺された600万人のユダヤ人に捧げる」
スティーブンスピルバーグだからこその言葉の重みを感じた。
600万人分の1100人。救われた命より奪われた命のほうが圧倒的に多いことを忘れてはならない。そんなメッセージがこの一文には込められていると思う。
この映画の監督、スティーブンスピルバーグ。彼がユダヤ人だからこそ、この映画には言いようもない説得力があるのかもしれない。
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