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アンナ・カレニナのpikaのレビュー・感想・評価

アンナ・カレニナ(1948年製作の映画)
3.5
さすがにお腹いっぱいになってきたけどアンナカレーニナ映画版を見る③

デュヴィヴィエの作品を見たいというよりヴィヴィアン・リーのアンナを見たかったので見てみたら予想以上に良かった。
台詞説明がちと多いが、クラシック映画の醍醐味のひとつである最短距離でのドラマ説明が効いてる。驚くほどわかりやすい。個々のエピソードの重要なポイントをきっちり簡潔に描いている。
なぜこんなに魅力的で美しく気品溢れるアンナが、という点をちゃんとなぞっている。他2作で不満だったカレーニンへの憎しみや息子セリョージャへの思いが(それでもまだ足りないとはいえ)ちゃんと描かれていた。
なによりヴィヴィアン・リーの美しさ、演技の説得力よ。予想以上に素晴らしかった。アンナの気品、愛、魅力をようやく見れた気がする。

原作の何もかも詰め込んじゃうから破綻するんだ。映画にするためには原作をそのままなぞってはダメなんだ。別物なんだから。単に演出で独創性を見せたりいじくり回すだけじゃ成立しない。映画にするには映画でなければならない必要性を見せねばならない。原作のシーンを取捨選択して見せるなんてのはナンセンスなんだ。すげー納得した。
アンナのドラマのみに振り切ってる潔さ、そのためにごちゃごちゃしそうなところはズバズバ切って改変してアンナの感情のみにフォーカスしている。2時間前後の映画にするならむしろそれでいいし、そうすることでしか映画にならないんだ。
リョーヴィンとキティのエピソードもアンナの対比としてしか機能させず抑え目にしたのもよい。お情け程度に入れるくらいならここまで絞った方がいいんだ。結婚式の対比や子供云々の改変も上手くて、このエピソードがなぜ入るのか疑問に思うこともなく全て本筋に対してちゃんと機能していた。

惚れたはれたくっついたってのは瞬間的な感情で誰もがわかることだが憎しみや離れていく感情はそれぞれ違う。有名な原作の序文『幸福な家庭はみな似通っているが不幸な家庭はそれぞれに違う』をちゃんと見せようとしていて好印象だった。成功しているかは別にして。

とりあえず3本見比べてみて、「アンナカレーニナ」自体映画にするのは難しいんだなと感じた。
序盤はそれぞれ凝ってて面白いんだけど後半どれもが崩れてくる。映画そのものの主題というか何に重点を置くか分かれる部分、どれもがやはり原作に及ばずで単に行動の結果を見せるだけになってしまっている。
まだまだ映画化作品はあるけどちょっと疲れてきた笑。
また見比べてみるかもしれないが映画化自体不可能と結論づけちゃうと見る気が起きないな。
ドストエフスキー原作の映画は正統派からインスパイアされてアレンジしたものまで作家がそれぞれドストエフスキーの思想をあの手この手で具現化している作品が多いので比較する見応えがあったがトルストイだと難しいものですね。
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