さくら

ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版のさくらのレビュー・感想・評価

5.0
地中海沿岸の気候みたいな、さっぱりしてるけど美しく奥が深いような、情熱や愛が宿っているような、シチリアの古い町並みと音楽とストーリーの流れがじわじわ沁みてくる。

映画というよりも一人の男性の人生を垣間見たような感覚になった。

何よりも映画が好きな、ずる賢い少年ならではのピュアさと、結構何しても許された当時の映画の、人々の日常の一部だったあの自由な感じに、気持ちが静かに高揚し、
好きだった映画が疎かになるような青年時代の青春にもどかしくなったり、アルフレードの深い愛情が切なくなったり。
何より名言が多い。

映画終盤に感じる色んな人の彼への色んな形の愛が切なく沁みる。
ラストは完全にトトと気持ちがリンクして泣かずにいられない美しいラストだった。
DVDで見たけど、エンドロールが流れても停止ボタンを押すことなくそのまま見続けてしまうぐらいこの世界観から抜けたくないような。

完全に私事だけど、この映画のお供に淹れたネパールの秋摘み紅茶の、さっぱりした風味なのにお茶っ葉独特のほのかな苦さと口に残る甘みが作風と合っていて、見終わった後目も耳も鼻も口の中も幸せだった。

ある程度淡々と進むけど、全てのシーンに深い想いが込められていて、その全てを汲み取るには一回見ただけじゃ足りない気がする。

歳を重ねて人生経験を積んで見てみたらまた意味が違って見えてきそう。
ある程度経ったらまた見たい。
人生のお供として手元に置いておきたい映画。

古くてレトロな映画館で見てみたい。




ーーネタバレ含む追記ーーー




2時間版を見て、こちらが尚更深みを増した。

どんな形であれ色んな人の愛情が絡まっていて、中盤以降の登場人物たちの行動に切ない愛情が付加されてワンシーンごとに2時間版以上の深い意味が加わってくる。

そして2時間版でカットされた部分は、ヒロインとの関連のものがほとんどで、アルフレードとの関係性を強調する作りになっていることが分かった。

裏を返せば、カットされた部分はヒロインとトトの関係の意味を深くするものが多い。

これは私の憶測だけど、
⑴ 行かなくていいはずの兵役に手続き不足とか本当かどうかもわからない理由で行くことになった
⑵ タイミングよくエレナの婚約者の話が出る
⑶ 10日で良かったはずの兵役が2年もの間に伸びてしまう
⑷ しまいには病室で看護師さんが「除隊が決まった」とトトに伝えていた

この4つから、特に⑴がナレーションにも入らずカットされてたことから、エレナのお父さんが裏で手を回してトトを兵役に入れたんじゃないだろうか。
銀行の重役だったし。
そしてどんなに訴えても取り合ってもらえなかったのに、病気かけがになって初めて除隊許可が降りたんじゃないかな。

それを考えると、ラストが尚更切なくなってしまった。

そしてアルフレードのトトへの嘘や帰ってくるなという言葉が、切実にトトを愛していたからこそだと感じた。
さくら

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