図師雪鷹

ギャング・オブ・ニューヨークの図師雪鷹のレビュー・感想・評価

4.3
舞台は19世紀初頭のニューヨーク。
そこでは様々な出自を持つ人々がせめぎ合っていた。
中でも、大勢のアイルランド人が大飢饉のために故郷を離れニューヨークにやってきたが、彼らは貧しく、「ファイブポインツ」という安アパートや売春宿が立ち並ぶ街にしか住めなかった。だが、そこは「ネイティブ・アメリカンズ」という、祖をイギリスに持つアメリカ生まれの人々の土地でもあった。
アイルランド人は、ネイティブ・アメリカンズに対抗するため、「デッド・ラビッツ」という徒党を作り上げる。
主人公は、デッド・ラビッツのリーダー、ヴァロン神父の息子、アムステルダム。だが、ネイティブ・アメリカンズとの抗争の際、ネイティブ・アメリカンズのリーダー、ブッチャーがアムステルダムの父親の命を奪う。
デッド・ラビッツは解散。アムステルダムは少年院に閉じ込められてしまったが、16年後、再びファイブ・ポインツに戻ってくる。ブッチャーへの復讐を心に秘めて。


これは単なる復讐譚ではなく、ニューヨークに渦巻いていた貧困、人種差別、鬱憤、愛、狂気をとてつもないスケールでまとめ上げた傑作だった。


主人公のレオナルドディカプリオより、ブッチャー役のダニエルデイルイスの方が印象に残った。デッド・ラビッツとの抗争において勝利を収め、華麗な衣装に身を包み、デカイ顔で街を練り歩けるようになったブッチャーだったが、過去に刻まれたとある "恥" を知り、彼の人生をもっと見たくなった。

最後の30分の大混乱は凄まじい。今まで溜まりに溜まっていた鬱憤が爆発したとき、もうそこは街ではなく、戦場になる。このスケールに圧倒された私は、瞬き一つももったいなく思えてしまった。

この映画の持つエネルギーは非常に大きい。マーティン・スコセッシ監督はこのプロジェクトに30年も費やしたとのことだが、膨大な時間と手間を費やして、ニューヨークのかつての風景と人々を再現してくれたことは本当にありがたい。どのカットにも、フィクションだとは感じさせない質感があった。



追記→
日本版のキャッチコピーが愛を強調しすぎであまり良くない。
もっと歴史を感じさせるものの方が良かったと思う。
それに比べ本国版のは最高。

AMERICA WAS BORN IN THE STREETS

シンプルでかっこいい上に、しっかりこの映画のテーマを伝えている。
図師雪鷹

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