よしまる

時代屋の女房のよしまるのレビュー・感想・評価

時代屋の女房(1983年製作の映画)
3.2
 夏目雅子の主演作の中でも彼女の魅力という点では1.2を争う、あくまで個人の見解です映画。

 いやあ、出逢ってからわずか10分ほどですっかり惹かれ合う男と女を、渡瀬恒彦と夏目雅子が熱演。森崎東監督の真骨頂ともいうべきこの流れるように美しいオープニングシークエンスは何度観ても素晴らしい。というか、もはや尊い。

 そのぶん、夏目雅子が途中退場してしまってから映画としての躍動感が一気に失われてしまう。途中、一人二役の別人として登場するも、物語の内容と同じく主人公・真弓の穴埋めにはならず、オマケとでも言うべきスナックや居酒屋、旅館の人々とのやりとりこそ楽しいものの、どこか終始主役不在の寂しい雰囲気が拭えないまま終わってしまった。

 細かく散りばめられたサブエピソードのうち、沖田浩之とのやりとりがちょっと面白いのだけれど、のちに夏目ともども若くして命を落とすふたりなだけに今みると切なさ倍増。

 小説は未読なので元からこういう話なのだろう。とは言うものの、前半の半端ない輝きの夏目雅子が出ずっぱりだったとしたら、間違いなく神映画として名を残したに違いない。繰り返すけれど、あくまで個人の見解です。