よしまる

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話のよしまるのレビュー・感想・評価

3.4
オンライン鑑賞会のお題。

愛しき実話、こんなサブタイトルを付ける映画はろくなもんじゃねえと入口から少し構えてしまうw
実話かどうかはキャッチコピーに入れるなり、本編の冒頭やエンディングでお伝えすれば良いことで、タイトルに入れるというのは何がなんでも知ってもらわなきゃ困るというアピールに見える。つまりそういうこと言うのは、実話であることを知ってもらわないと具合が悪いのだ。

例えば映画にしている割に大したことのない話だったり、逆にいくら何でもそれはないという荒唐無稽な話だったり。いずれにしても、フィクションだとしたら物足りないとか許されないとか、その免罪符としての実話アピールと思ってしまう。

さて、実際にはとても笑っていられない難病を抱え、茶化しながらも前向きに懸命に生きる鹿野さん。大泉洋の演技はあまりに誇張が過ぎて、過去の話とはいえ、令和になってここまでパワハラやセクハラを露骨に表現すると観ていてしんどい方もいるんじゃないかと心配にもなる。
てか、こりゃ「愛しき実話」とでも言っておかないと炎上しかねない。ただの実話じゃないよ、愛しき実話、だよ。

「人に迷惑をかけてはいけない」が一周まわって「人に頼って何が悪い」みたいな思考になっていると感じられたのだけれど、やはりその考え方は生理的に無理だ。
もし自分がそのような境遇に置かれたとしても、誠意を持って尽くしてくれているボランティアの人にわがままを言うことは到底出来ない。

それはおそらくこの映画の主張のひとつである「フラットに人に物事を頼むことができて、それを無償で支えることのできる社会」の実現、あるいはそれに向けての見直し、ということなのだろう。

いや、違うだろ。

なんでこのような話が感動的なのか皆目見当もつかないけれど、映画としておもしろくない訳では無い。だからこそわざわざ実話アピールは要らないし、フラットじゃないのはどっちだよと言いたくもなる。

まあまあのスコアを献上しているのは当然、難しい役どころを熱演した三浦春馬くんに哀悼の意を込めて。こんなにもこのキャラクターをおそらくは深く理解して演じたにもかかわらず、自死という選択しかなかった彼の辛さが忍ばれて胸が痛い。