よしまる

あゝひめゆりの塔のよしまるのレビュー・感想・評価

あゝひめゆりの塔(1968年製作の映画)
3.4
オンライン上映会のお題。

これ、舛田利雄監督作品だったのか。タイトル通りの反戦映画に偽りはないのだけれど、エンタメ度がすごいというか、いろいろ盛りだくさんで忙しい。

現代のゴーゴー喫茶に始まり、のどかな沖縄の風景、他愛ない学校生活、そんな描写へと場面は移る。米軍の攻撃により学童の船が撃沈、看護要員として戦地に赴き、軍人たちと行動を共にしながら戦いの渦中に放り込まれ、そして次第に窮地に追い詰められていく。これだけの内容を破綻もなく各キャラを立たせ、ずっと見どころを維持する手腕は見事。

役者陣は二谷英明や高品格、藤竜也、みんな若くて元気がいい。なかでも和泉雅子の輝きは特筆に値する。かつてのマイ推しアイドル(笑)小高恵美の実の叔父の小高雄二の顔も。

ところで吉永小百合である。この人の持つスター性はもちろんこの映画の肝となっているわけだけれど、なぜかどうにも馴染めない。てか、彼女が国民的美少女としてもてはやされたことがいまもって信じられない。これは個人の好みというほか無い。

存在感はあるし熱演ではある。しかしながら彼女だけが際立って(際立たせて)いるために、妙にリアリティに欠けてみえてしまう。1人だけ小綺麗なお嬢さんが紛れ込んで、戦場から浮いているように思えてならないのだ。

しかしそれこそがスター。周囲の者どもとは異なるステージに立ち、1人だけ常にスポットライトを浴びているイメージ。
吉永小百合という女優のなせる技なのかもしれないし、意図された演出力の賜物かもしれない。
そういう映画は、その俳優さんを好きになれるかなれないかで評価が大きく異なるということを思い知らされた。

内容は伝えたいことが伝わり、想像を凌駕する激しい戦場のシーンもちゃんと作り込まれていることには驚いた。反戦映画としての設えもしっかりしていて。

多くの若い命が理不尽に奪われ、何万何十万という犠牲者をだした沖縄戦。しかもこの映画が撮られた時でさえまだアメリカの領土で日本ではなかったという事実。

そういうのを見つめ直すきっかけとしても1度は観ておくべき名作であることは間違いない。要らんこと言って誠にすみません。