よしまる

アナザーラウンドのよしまるのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
3.9
 マッツ連投。

ハリウッドな大作に次々に出ていても、こうしたデンマーク映画に出てアカデミー賞で国際長編映画賞をしっかりかっさらうマッツミケルセン、さすがとしか言いようがない❣️

さらに言うとマッツの魅力すなわち、渋い、カッコイイ、カワイイの全部乗せ。これだけで観る価値2倍。

15だか16歳からお酒が飲めて、水やコーラよりビールの安い国、デンマーク。
同じ北欧でも寒いフィンランドやノルウェーは早くから依存性問題も深刻で度数の低いビールを推奨したりと対策もしっかり取られているようだけれど、デンマークはヨーロッパ中を見てもまだまだお酒に寛容な国と言える。

マッツを中心とした4人の酒飲み友達が、血中アルコール濃度を0.05に保てば健康にも精神的にも良くなるという、ノルウェーの学者が提唱した説を立証しはじめる。
そりゃちょっとハイになって仕事や授業が出来れば楽しいだろう。

ちなみに自分語りをすると、お酒は好きなのに体質的に弱くて、すぐ真っ赤になるし飲みすぎると頭痛不可避。なので、理解は出来ても共感は無理ww

飲むのは自由だけれど、酒臭いの嫌だし、それで人生を棒に振ったり事故で死んじゃったりから脳や体を壊しちゃった人まで周りにいるので、とても応援なんかは出来ない。
なんなら酒の力を得ないと何かが出来ないとか迷惑でしかないと思っているww

マッツたちも案の定、最初のアルコール量からどんどんエスカレートしていき、 ところどころ破綻していったかと思うと最後には悲劇が、、。

しかしながらこの映画、単にお酒飲んだら楽しいよー、でも飲みすぎたらあかんよー、というだけの話ではない。

お酒を題材にしてはいるけれど、人としてどう生きるか、他者との関わり合いは?家族とは?友達とは?そうした誰もが抱える問題を面白おかしく描いているめちゃくちゃ温かいヒューマンドラマ。

ここにも、個を主張しながらも他者に優しい北欧の人々の暮らしが垣間見える。
少なくとも酔っ払いを愚弄したり、飲みすぎて倒れた人を罵倒して敬遠するような冷たい人はあんまりいない。日本でも酒飲みは多いけれど、泥酔者には寛容ではない気がする。

ところで北欧と言えば気になるのはやはりインテリア。
マッツ家のダイニングにはデンマークの照明メーカー、ルイスポールセンのPH5。グリーンのカラーでオシャレ感満載。
テーブルクロスはモーニングとディナーでちゃんと替えて、マリメッコを使っちゃったりしてそれぞれテーブルセッティングをしている。これまた日本とは違う光景で、こういうのをさりげなく当たり前に、邦画でもせめて映画の中からしていってほしいなぁと、切に願う。

最後に。マッツの娘役として出演予定だった、トマスヴィンターベア監督の実の娘さんは、撮影を前に事故死されたとのことで、本作も彼女に捧げられている。
なんとも痛ましい事だけれど、この映画が酒飲みを面白おかしく揶揄していながら、どことなく優しい眼差しに溢れて見える理由がそこにもあるのかもしれない。
ご冥福をお祈りします。