何者にもなれてなさそうな男と、バンドマンとヤクザと、蜃気楼みたいな"お持ち帰り"。彼らの夏の行く末は、正直寝るほど退屈だった。
まず、1965年という舞台の背景を理解するまでに時間がかかる。そりゃ、当時の「格好良い」と現在の「格好良い」なんて違うとは分かっている。ただ、シュールな小ネタや下品な会話が一般的とは対極の方向へ向かっている気がして。映画って、ストーリーが支離滅裂なだけでこんなにも面白くなくなるんだよ。
公開当初もの凄い動員数を打ち出したのに今までDVDが販売されず、サントラだけが名盤になっていったのは、やはりCDでの曲順が完成形という事ではないだろうか。
とにかく音楽の当て方が雑だった。完全に出る幕を間違えていたり、フル尺で流れなかったり、そもそもサントラに収録されているのに本編でかけられないナンバーがあったり。今まで音だけで感じていた想像の余白を汚物で埋められた感覚だった。
ただ、さすが劇場の音響というのはあって、『希望の轍』では聞き馴染みのない、イヤホンでは隠れていた旋律まで聴こえてきた。確かに、映画館でこの音楽群が聴けた事は貴重である。
今回父とこれを観に行ったのだが、父も初見は14歳だったらしい。そして今、30年分の歳の差でこれを観てる。コドモには判らないような大人の火遊びとか、波に乗る愉しさとかを、いつか感覚として、刺激として感じる日が来るのは何だか哀しい。
湘南とは呼ばない。"稲村ヶ崎"にロマンがある。
緩急が多すぎて、カルトと呼ばれてもこれでは仕方ないだろうな、という出来。それでも、桑田監督は映画らしい事をしようとしてる。とりあえず、これに怒って北野武が作ったと言われている「あの夏、いちばん静かな海。」を観たくなった。笑
得点は、そもそもの音楽の良さと加勢大周×清水美沙に。Blu-ray特典のメイキングを観て加点するかも。
追記:なるほど。元々160分だったものを120分に縮めたと知って納得しかけている。編集が無理やりすぎて、それで冷めた部分はあったので。