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ザ・ウォード/監禁病棟のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ザ・ウォード/監禁病棟(2010年製作の映画)
3.8
 1926年、オレゴン州にあるノースベンド精神病院、無人の廊下を何かの気配が進み、独房に入る1人の少女は恐怖に震えている。何者かは彼女の部屋に侵入し、絶叫ののちに少女の体は天井に吊るされ、静かに動かなくなる。それからちょうど40年後、下着姿の1人の少女は森の中を後ろを振り返りながら駆け抜けて行く。ある一軒家の前に辿り着くと、少女は切羽詰まった様子でマッチに火をつける。目の前で燃え続ける家、少女は膝をつきながら絶叫するが、すぐに州警察に捕らえられる。精神病院に連れ戻されたクリステン(アンバー・ハード)はすぐに監禁病棟に収容される。看護師のロイ(ダン・アンダーソン)に導かれ、やって来た監禁病棟には既に4人の女性たちがいた。担当医師のストリンガー(ジャレッド・ハリス)に自分は正気だと話すが、聞き入れてはくれない。先に入った4人の女性たちの冷ややかな目を掻い潜りながら、薬すらまともに飲まないクリステンの強固な意志はあるが、彼女は自分の仕業とされる放火と、名前以外、全ての記憶を失っていることに気がつく。

 カーペンター初のサイコ・スリラーとなる今作には、カート・ラッセルやロディ・パイパーのような不器用なアウトローは登場しない。男性キャラクターは主人公を見守るのみで、クリステンと彼女を取り巻く4人の女性が物語を動かす。歌が得意なエミリー(メイミー・ガマー)、ロイを誘惑する肉食系女子なサラ(ダニエル・パナベイカー)、スケッチブックに絵を描きためているアイリス(リンジー・フォンセカ)、そしてうさぎのぬいぐるみを肌身離さず持ち歩くゾーイ(ローラ=リー)と癖のある4人が主人公の様子を見守っている。抑圧下に置かれたある限定された空間で起こる出来事、1人1人のおぞましい死の瞬間など、これまでのカーペンターの集大成のような内容ながら、少女4人の物語はどこか楽天的なムードが漂う。クライマックスの辻褄合わせこそマンゴールドの『アイデンティティ』の焼き直しの匂いも強いが、アナログ・プレイヤーでかけられたThe Newbeats の『Run Baby Run (Back Into My Arms) 』のリズムに合わせ、女性たちがモンキー・ダンスを踊るシーンの魅力には、簡単に抗えない。
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