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ルルドの泉でのodyssのレビュー・感想・評価

ルルドの泉で(2009年製作の映画)
3.3
【人生の不条理】

『聖処女』という映画がある。ルルドの泉の起源を描いた傑作で、主演のジェニファー・ジョーンズも魅力的。

さて、本先品は最近のルルドの泉を舞台に、病気を治す奇跡を期待して集まってくる善男善女たち、そして彼らのケアをする修道女たちや医師たちの姿を描き、奇跡が起こった女性と起こらなかった女性の明暗をも描いている。

この映画で興味を惹くのは、現在の観光地化したルルドの泉がどうなっているのかというところ。何しろ多数の病人が押しかけてきているので、それをさばくシステムもちゃんと整備されているし、そこに関わる修道女や医師もなかなか激務なのだと分かってくる。レア・セドゥー演じる、ちょっとミーハー的なアルバイト修道女もいて、観客としても息抜きになる。

しかし、この映画の根本的なテーマは、神意の不条理であろう。奇跡が起こって病が癒える女性。しかし彼女は特に信心深かったわけでもない。逆に、何年も必死に神に祈っているのに泉の効果が現れない人もいる。神の意図は奈辺にあるのか。

努力すれば報われる・・・それなら人生は簡単だ。しかし現実はそう優しくはない。努力しても失敗する人もいれば、たいして努力しなくても成功する人もいる。

同様に、長年神に必死に祈っても願いが叶わない人もいれば、ついこないだまでは不信心者だったのにちょっと祈っただけであっという間に神意が表れる人もいる。

いわゆる奇跡にはこういう不条理が絶えずつきまとう。この問題は『聖処女』でも扱われていたが、『ルルドの泉で』で改めてはっきりした形で取り上げられた。

しかし、答えは出ないだろう。生きるということがそもそも正解のない過程なのだから。そして人生から偶然(=神意)という要素を完全に排除することは不可能なのだから。
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