NORA

東京原発のNORAのレビュー・感想・評価

東京原発(2002年製作の映画)
3.7
東京に原発を誘致したらどうなる?というシチュエーション・コメディ。題材が題材だけに、かなり政治色は強い。賛成・反対派双方を茶化しつつ、結論としては予想通り反原発に導いていくが、小ネタの連続で笑わせてくる前半と比べると、後半をいきなり出てきた教授の解説一辺倒で終わらせてしまうのは構成として退屈である(あと今見ると科学的な誤りや、「放射能って空気感染するウイルスみたいなもんでしょ」みたいなぎょっとする表現も散見される)。結末もけっこう早い段階で予想できてしまう。
それでも本作が、(一応)原発再稼働賛成派の自分にも相応に面白く観られたのは、この映画の中で示された「正しさ」にもまた、作り手が明らかに距離を置いているからだろう。「やはり原発は廃止しなきゃいけないと思いました!」と目を輝かせているあなたは、あの終盤の夕日をバックにした会議室の「感動的な」シーンの、明らかに意図した白々しさを、果たしてどう受け止めているのか。国は信じられないと叫ぶあなたが、なぜこの映画はスルスルと信じてしまうのか。この映画が告発しようとしているのは、日本という国でも原子力発電でもなく、目の前にぶら下がった「正しさ」にすぐに飛びつき、自分はその側にいると信じたがる、浅はかな人間たちではなかろうか。あなたがそうだとは、決して言わないけれど。
ほとんどの場面が会議室で進行する地味な作品であるため、後年作られた『天空の蜂』などに比べると、エンタテイメントとしては弱い。もっとも、本作を世に問うた制作陣の努力は買いたい。何より、偽善的な香りがしないだけ、3.11後に雨後の筍のように作られた「正しい」反原発映画などよりは、数段まともであり、かつ観る価値があると言える。
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