映画好きのCarlっていう人

いまを生きるの映画好きのCarlっていう人のネタバレレビュー・内容・結末

いまを生きる(1989年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

高校の時授業で少し見てRobin Williamsが亡くなった年ということもあり鑑賞。泣いた。その後別の先生の授業で見させられて泣いた。この前久しぶりに見て泣いた。

この映画はメッセージ性がものすごく強い。
全寮制ということからもわかる通り、この学校は伝統に則り、規則を重んじ、はみ出すことを許さない。しかも名門校であるがため、親が将来に敷いたレールとして通ってる生徒も多い。この映画では”親”や”学校”は社会そのもを表す。
システムかされたような授業ばかりのところに現れたのがKeating。風変わりな彼の授業はすぐに生徒の心を掴んだ。最初に出てくる詩”To The Virgins, Make Much of Time”では「若いうちにやりたいことやっとけ!時の流れは早いんだから」と、Keatingの教えを代表した内容である(タイトル画面のろうそくは”今も時は流れている”という象徴)。その他にも「情熱や愛は人が生きる意味だ」と教える。現にKeatingはロンドンからはるばるかれの情熱”教育”のためにこの学校へ来たし、Neilも情熱を見つけ、Knoxは愛を見つける。

ここの生徒全員の将来にはすでにレールが轢かれているが、Neilのレールは周りよりも頑丈に思える。それに沿って真面目に生きてきたNeilは”思うままに生きろ”というKeatingの教えに人一倍興味を示し、Dead Poets Societyを発足する。
ずっとお父さんの前で”いい子”を演じてきた彼の本当の姿は彼がシェイクスピアの劇”夏の夜の夢”で演じたペテン師、影法師パックではないかと思う。劇の最後に彼のスピーチでこう言う: もし気に入らないのなら夢だと思って叱らないでください。正直者の僕を許していただけるのならもっtいい夢を見せましょう。この時彼の視線はお父さんから離れない。”いい子”の役を捨て、”正直”にお父さんへメッセージを伝えている。
しかしその願いも虚しく、転校させられることを告げられる。自由になれるのは10年後。もう青春は帰ってこないし彼の人生でのその10年は失われたままだ。そしてNeilは自殺を図る。
彼の死を知ったKeatingがNeilの机で見つけた本にはD.P.Sの開会の一節が書かれていた。「森へ行った。思うまま生きるために。命ならざる者は拒んだ。死ぬ時に後悔が残らぬよう。」影法師(本当のNeil)を意味する影を背景に冠を取り、窓を開けて、彼は森へ向かったのだと思う。本当の自分として。やりたいことをやって後悔なく生きたと言わんばかりに。

学校の庭のシーンでKeatingは言葉や"アイデアは世界を変えられる。ユニークでいいんだ。自分らしく生きろ"と教えるが、自分らしく人と違って生きてきたKeatingは学校(社会)に目をつけられ追い出されてしまう。D.P.Sは解散、Neilは死に、Knoxもデートにこそこぎつけたが付き合いには発展しないだろう。結局元の"ヘルトン"へと逆戻り(もっと悪くなってるか)所詮社会には敵わない。大人しく社会の在り方に従って生きるかその社会から追い出されるか。まさに現代社会への疑問の投げかけ。

ではこの映画はバッドエンドなのだろうか。変わろうと、変えようとするだけ無駄だ、と。そうではないと思う。
数名の生徒が「O captain! My captain!」と叫んで机に立ちあがるシーン、あれは「あなたの教えは無駄じゃないですよ!僕たちが引き継ぎます!」というKeatingへのメッセージ。その証拠にみんなの前で発言するのをあれほど嫌がってたToddが先陣を切っている。
「O captain! My captain!〜」は南北戦争に勝ったのにそこにあなたがいないのが残念ですという凶弾に倒れたリンカーン大統領へ捧げたもの。退学を免れた生徒たちからKeatingへのメッセージだ。

"Cape Diem"という言葉だけでなく、社会問題に疑問を投げかけ、最高のパフォーマンスで笑わせ、泣かせ、作り込まれた脚本を提供するこの映画はまさに傑作!アカデミー脚本賞の受賞も納得!
特に映画の中のこの社会の風潮がある日本の人に見てもらいたい。
見た時が高校生と年代が被っているのもあり、すごく印象に残った作品である。