映画好きのCarlっていう人

セッションの映画好きのCarlっていう人のネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ドラムをたしなむ者として見逃せない映画である。終始心臓ばくばくでついつい力が入ってしまう場面がいくつもあって、観客を掴んで離さない!これはこの類のスピード映画としては必要不可欠。超体験型で深く考えなくてもいい映画なので思う存分のめりこめるしこんな映画見たことない!!

まずフレッチャーの悪口が最高w 悪口の才能を感じる。初見ではあんな緊迫した状況だからクスッともできなかったけど…(いつか"Not quite my tempo"のフレーズを使う日が来ることも祈ってる)あの額に浮き出る血管がまた怖いw
クライマックス手前ニーマンとの再会シーンまで悪者として映画いてはいるが、その行為にはちゃんと意図があることを知ったらなかなか憎めなくなってしまった。そして納得できる。本当に才能を持った者は努力の手を休めない。褒められてもけなされても上を目指す向上心、熱意、強靭な心を持った者でしか歴史に名を刻むようなやつにはなれない。一理あると思う(まあそれでもひどいやつだと思うけどw)追い込んで追い込んで、それでもなにくそ!って血を出しながら頑張るやつくらいじゃないとダメだ、と。"whip"(むち)を”lash"打ち付けるようなしごきに耐えてこそ真のgreat jazz playerになれる、と。
ニーマン役のマイルズテラーはあまり評価されてないようだけどかなりよかったと思う。映画序盤のようなヘタレっぽい子供っぽいところを保ちながら、内に秘めたる熱意も滲みでていた。それにしてもこいつは主人公にも関わらずかなりの”嫌なやつ”だ。自分が他人のファイル無くしたくせにチャンスだとアピールしたり、人の間違えをほくそ笑むし、可愛い彼女は振るし(これが一番許せない)!!しかし大体こういう世界で脚光を浴びるのは変わったやつだ。もっというと嫌なやつだ。むしろそのことに集中しすぎて他人には”嫌なやつ”になれるようなやつが成功するのかもしれない。車で事故ってもドラムしに行ってたからなwそれにしても自己流でやってきたドラムを演奏しながら演技するってすごいなwマイルズテラーは本番でミスらないためにも完璧に演奏できるようにしてるはずだけど、ニーマンはギリギリで怒りをぶつけながら演奏してる。あの血もメイクではなくて本物だと聞いて本当に練習したんだな、と思う。
こんなもの思いつく脚本もすごいけど、カメラワークと編集もすごいと思う。特にドラムソロシーンではシンバルやスティック、血の滲む手などをクロースアップで写しダイナミックさを表現している。さらに音楽に合わせた編集で観客のテンポを完全に支配する。まるで指揮者フレッチャーに動かされているオーケストラの一人のように。

最後10分は映画史に残るラストだと思う。セリフは一切なく、演技、カメラワーク、ライティング、編集と映画の持ちうる全てでクライマックスを語る!これぞ映画!

それと何人かの評論家がジャズ目線で言えば全然ダメだと言っているが、おれはそうは思わない。これは”ジャズを通して起こる頑固な二人”の話であって”ジャズ音楽”の話ではないのだから。そしてジャズの演奏がいわゆる最高じゃないのにも意味があると思う。フレッチャーは子供相手に仕返しをするようなやつだし、ニーマンも感情的すぎるし努力家であって天才ではないのだから(最後のソロも映画を通して見てきたフレーズばかり。もし彼がジャズ評論家絶賛のソロをしていたら彼はもっと簡単に出世コースだったに違いない)

とにかくこんな異常な映画は今まで見たことがなかった!観た人全員に、まるで"whiplash(むち打ち症)"のように頭に衝撃が走ったことだろう。