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ホタルのgogotakechangのレビュー・感想・評価

ホタル(2001年製作の映画)
3.4
ここでも戦争が天災のように扱われていた。
心情的には、戦争で失われた過去や狂わされた人生が、たとえ死の間際であっても報われるような結末は、モツ煮の中に混じったゴムチューブの切れっ端をモツだと自分に言い聞かせながら飲み込んでいるようで、どこかむりしてしまう。

戦争は嫌なものであって欲しい。

ただ過酷な状況で生まれる連帯感に、相手が津波だろうが戦車だろうが関係ない。同じ目的の下に力を合わせる事、その純度が高ければ、それが成就しようが儚く散ろうが感動的なものである。だから簡単に泣けてしまう。

問題はそこに、未来につながる希望が含まれているかどうか。

健さんの作品には、去りゆくものに対する多大な敬意を感じるものが多い。他人とのつながりを第一に考え、その絆を断ち切ろうとするものに牙を剥き立ち向かう。それがヤクザの親分だろうと世間だろうと。
そして、その戦いがどう考えても勝ち目のない無茶なものであっても。

『ホタル』には未来が希薄だった。友人の墓の前で手を合わせているのをずっと見せられているようだった。

一番心動かされるのが、特攻に出ていく若者達から母のように慕われていた食堂の店主(奈良岡朋子)の、送別会でのスピーチ。健さんではなく、奈良岡朋子のセリフというのが、この作品のウィークポイントではないか。

ただ、個人的に健さんの大ファンであることに変わりはないが。
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