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この世界の片隅にのgogotakechangのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.7
8/11〜14までの4日間、ワタシのアパートに娘が来た。

訳あって今は別々に暮らしている。そうなってからもう3年近くが経つが、娘がワタシの部屋へ入るのはこれが初めての事だった。最初は小6らしくほんの少し神妙な面持ちでかしこまっていたが、慣れてくると途端にうるさくなった。
ワタシももしかすると娘以上に緊張していかのかもしれない。その内、少しずつ他愛もない言葉のやり取りに冗談が交じるようになっていった。

4日間あるのでまずは映画。あれみてこれ見て、次はあそこ行ってここ行ってと、夏休みの行事を一気に片付けてしまおうと思っていた。しかし、中学受験を控えた彼女にそんな余裕は微塵もなく、ひとしきり騒いだあとは、踵を返して机に向かいテキストを広げ始めた。なんでも一日10時間勉強しろと、塾の先生に命令されているらしかった。

それからの4日間は結局どこにも行かず、問題を解いているか寝てるか食ってるか、そしてたまにYOUTUBEでサンドイッチマンのコントを見てるかの繰り返しだった。

何も起こらず、たまに笑い、食べ、そうやってゆっくり時間が過ぎていった。最後の日も特に感傷的なことはなく、彼女は妻の元へ帰っていった。

後になって、当たり前のように一抹の寂しさが襲いかかってきた。と同時に、あの4日間、ワタシは幸せだったことに気づいた。

おそらく、たとえ部屋の外が戦火に見舞われていたとしても、あの静かで平和な時間は揺るぎなく愛おしいものとなっただろう。

幸せは後から追いかけてくる。

『この世界の片隅に』は、そんな極私的な"幸福感"が溢れている。

人々の毎日の営みの中に慎ましやかな憩いがほんの僅かでもあればそれが幸せとなって一人ひとりの心の中に残っていく。
それを"命"ごと奪い去っていく行為に、一体誰が賛同するものか!

そんなことを、あらためて思った。
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