YasujiOshiba

クローズ・アップのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

クローズ・アップ(1990年製作の映画)
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DVD(アイヴィーシー)にて。プライスタグは1500円で、アマゾンが1100円。他もこのくらいだとうれしいかも。

モレッティの短編『Il giorno della prima di Close Up(『クーズ・アップ』公開初日)』(1966)はこの映画のプロモーション。そのなかでモレッティは、この作品は単なる「イラン映画じゃなくて、あの『そして人生は続く』のキアロスタミの作品というだけじゃなくて、映画の潜勢力についての考察(una riflessione sul potere del cinema)なんだ」と言うと、キアロスタミはなんといっても「あの黒澤明がきみはすごい。あんなにうまく子供を演出するなんて」と誉められたのだぞと力説している(ただし、この映画のことではない)。

( https://archive.org/details/cinema16-european-short-films/06《Il+Giorno+Della+Prima+Di+Close+Up+•+Opening+Day+of+Close-Up》by+Nanni+Moretti+(IT%EF%BC%8FFR+1966).avi )

まさに「映画の潜勢力についての考察」。マーティン・スコルセーゼからも、『戦火のかなた』や『自転車泥棒』のようなイタリア・ネオレアリズモに匹敵すると評価されているようだ。じっさい、この映画で起こった事件は事実の再現であり、事件に関与した人物を登場させただけではない。事件の中で名前を騙られれた映画監督モフセン・マフマルバフその人までもがカメラの前に立つと、盗撮まがいの撮影、録音の失敗までを逆手にとって、ある種のリアルを再現しようとする。

しかし、そこで再現された映画は、はたしてフィクションなのかノンフィクションなのか。その間に立ち上がるものを映画と呼ぶなら、その映画をなんとしても自分の映画館で上映しようと奔走するモレッティのシネフィルぶりも、わからないではないではないか。
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