YasujiOshiba

エヴァの匂いのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

エヴァの匂い(1962年製作の映画)
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ヴェネツィア祭り(4)

まさに現代のヴェネツィアン・クルチザンヌの依代となったジャンヌ・モローがみごと!スタンリー・ベイカーのアクの強い演技にも好感。ヴィルマ・リージの清楚なイメージが、モローの大胆でデカダンな自由とみごとな対比。

スケールも大きい。サン・マルコ広場のドゥカーレ宮の角の柱のアダムとイブのレリーフをとらえる冒頭のカメラに、聖書の創世記からまずは「And the man and the woman were naked together, and were unashamed.」(2.25)という文言を重ねると、ラストシーンでも同じアングルを逆から回り込んで、「And he placed at the east of the garden of Eden Cherubims, and a flaming sword which turned every way, to keep the way of the tree of life.」(3.24)で締めるのだが、その直前、カメラは追放された女「エヴェ」が去ってゆくところを捉えていたではないか。


ヴェネツィアのラグーナを行き来する感じがよい。トルチェッロ島の邸宅へのボートでの往来は実にヴェネツィア的。もうひとつの舞台はローマ。エヴァの住んでいる地区は新興住宅地で、まだバラックも立ち並ぶところが映り込んでいる絵がよい。

虚栄だけじゃなくて、泥臭さをも映り込ませるモノクロのイメージを撮ったのはジャンニ・ディ・ヴェナンツィオ。フェリーニの『8½』やアントニオーニの『太陽はひとりぼっち』そしてロージの『シシリーの黒い霧』を撮影した名カメラマンだ。

そしてジャズ、ジャズ、ジャズがカットにリズムをつけてくれている。はっとさせられたのは、ローマでのナイトクラブのダンス。ジャンベのリズムに黒人のダンサーが踊るところなのだけど、コントラストのはっきりしたモノトーンの映像と、するどいカットをかさねる編集の妙。

いやはや、ロージーを再認識。一度きちんと振り返りたい。
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