つるみん

ウェディング・バンケットのつるみんのレビュー・感想・評価

ウェディング・バンケット(1993年製作の映画)
4.1
【父親には内緒でー息子には内緒で】

アン・リーの父親三部作の2作品目。

NYで生活しているゲイの台湾人青年ウェイトンは、同性の恋人サイモンと一緒に暮らしていた。しかし親にその事を告白できないまま、NYに親がやって来るという事で、市民権を欲しがっている中国人娘ウェイウェイと偽装結婚を行うことにするのだが…。

最近『フェアウェル』や『シャン・チー』といったようなアメリカで生活するアジア系移民を題材にした映画が多くなってきたように思えるが、誰よりも早くそこにスポットライトを当てたのはアン・リーなんだろうなと前作『推手』も含め感じた。

家族と離れた異国の地で育む愛に偽りはないが、親に正直になれない自分がいる苦しさ。しかし決して重い映画ではなく、偽装結婚というものをコミカルに描き、終わってみれば素敵なハートフルな作品になっている本作。父親三部作というだけあって、またもや父親の愛にやられてしまった訳だが、親の偉大さに改めて気付く事になる。この作品には複数の愛の形があり、愛の矢印が多方向に向けられている。結婚披露宴で分かる通り、血の繋がりや家族に拘りを強く持つ台湾人が、性別や国籍を超えて、新たに「家族」を作ろうとする。もしかしたら当時はこの作品、受け入れられない人が多かったかもしれない。ところが、どうだ今の世の中。アン・リーは完全に先取りしている。常に最先端に立っている監督だと言えよう。

非常に素敵な作品だった。
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