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パレルモ・シューティングのn0701のネタバレレビュー・内容・結末

パレルモ・シューティング(2008年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

生きていることに疑問があるカメラマンの男。彼はカメラマンとしての仕事はうまくいっているが、プライベートではうまくいっていない。その仕事についてもモデルの女から疑問を呈される。彼は何のために生きているのか。

あるとき、高速を逆走して対向車をギリギリ避けた際に写真を撮影するという無茶をする。そこには矢を向けて男を狙う謎の存在が映り込む。カメラマンは彼の存在に怯えながら「死」を意識する。

あるとき、不意に謎の存在が男に矢を射る。男はカメラで矢を受け、死を免れるが、謎の存在を強く意識し始める。

男はパレルモの地で仕事からもプライベートから逃げてベンチで寝転がっていると、女と出会う。その女は美術館で「死の勝利」という壁画を修繕する仕事をしていた。彼女は死の正体である死神の顔を描けないでいた。その壁画の死神は実在の司教や政治家たちを「血の出ない矢」で射殺していた。

死は消えてしまった死神の顔のように不明瞭だ。「死の勝利」が作者不明な作品ということが象徴的であるように、作者でさえ分からない解釈を見る者に与える。

男は海辺で死神の射る矢に貫かれ、海に落ちていく。彼は泳げないのだ。口から空気は溢れ、カメラや携帯は海に沈む。辛うじて息を吹き返すが、男の中には死を強く植え付けられる経験となる。

彼らは女の祖母の田舎に向かう。
女もかつて恋人に先立たれ死を受け入れられないでいた。異なる形であるが、二人の中には、死を意識して、受け止められないという共通点があった。

男は眠りの中で死神と対峙する。
そこで死を抱きしめ、受け止めることで生への意味を見出す。無駄に死ぬのではなく、今、この瞬間を生きることに価値を見出すことが出来たのだ。
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