kissenger800

キューポラのある街のkissenger800のレビュー・感想・評価

キューポラのある街(1962年製作の映画)
-
60年前の日本が舞台ですが、何がまぶしいって「明日は今日よりたぶん良い」って根拠ない楽観が横溢しているところ。登場人物個々の悲運を差し置いて、社会がそう信じていることが映像越しに伝わるの。
数年前のベトナムで実感したことだし今のインドネシアに思うことでもあるんだけど、たぶん百年前のアルゼンチンも千年前の東ローマ帝国も、こんな感じだったんでしょう。
などと考えながらメモとっていたら見終えるのにものすごく時間がかかっちまいました。

- 「親方が妾もって何が悪いんだ」てな台詞に代表される本作の東野英治郎、キャラクター造形が昭和世代日本人が認識する酔っ払い像を余すところなく体現しており、ウザking of ウザkingdom
- 吉永小百合の一人称が「あたい」なのは原作由来なんですか。一周まわって丁度良い気はするけど、一周まわらないと納得できない気分も否めない
- 小西得郎モノマネしかり川口オートのダート走路しかり伝書鳩の存在感しかり、出版編集者出身のサガ、ここ注釈いれなくていいのかい誰も分かんないよ。ってトピック多すぎ
- 金の話がむちゃくちゃ頻出する作品で「ミルク代5,000円」「映画こども50円」「カツ丼80円」「解雇予告手当1ヵ月20,000円」「アルバイト3,000円」「中学生の修学旅行おこづかい500円は少なすぎるから今年から1,000円」云々、だいたい十倍すれば今の貨幣価値に置き換わりそうななか、ミルク代だけちょっと誇張ある? 乳児成育にかかる費用という意味では合ってるのか
- 吉永小百合「あら、だってわたし、まだないもの」というメインプロットにも係る台詞の提示のされ方がいっそ今風
- 国家ぐるみの欺瞞であったことが判明している北朝鮮帰還事業、そういうつもりで撮っていないせいでなおさらアケスケに苦いんですが、残念ながら物語の重要背景であるそこ、日本社会が積極的に忘れようとしてきた甲斐あって今となっては意味が伝わる気がまったくしない。どこから説明すりゃ良いんだ……。
kissenger800

kissenger800