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県庁の星のtakのレビュー・感想・評価

県庁の星(2006年製作の映画)
3.3
公務員はマスメディアにバッシングされがちだ。税金とってる側だし、当然見る目も厳しくなる。仕事でも異なる感覚の面があるのも事実。この映画でも「採算は関係ないでしょう」とか、「予算は使い切らないと」とか、「書類作れてナンボだろう」とか、ステレオタイプな公務員像が描かれる。民間企業で日々やかましく言われている「原価意識」とは程遠い感覚に映る。

そうした世間一般と違う感覚の人々を描くことから始まったのが、この映画の原作本。だから、この映画で公務員の仕事現場を知ろうと思って観てはいけない。どちらかというと”民間からはこう思われている”という映画だし、決して公務員、というか政治の世界をよく描いた映画ではないのだ。でもよーく考えて。多くの地道に仕事している一般の公務員は、こんな人ばっかりじゃない。

しかし、この映画は地方自治体を叩く物語ではない。世間と違う感覚の主人公が成長する物語としてなかなか面白い。クライマックスの県議会の場面、予算削減を提案する主人公が民間で学んだこととしていくつかの事項を挙げる。違う世界に生きてきた人同士が次第に理解し合う物語の展開は、ちょっとベタだけど決してクサくはない。成長物語としての感動があるからだ。しかしそれは意外な形で裏切られる。結局これが今のニッポンであるのかもな。それでもラストシーンはささやかな改革が実行されるところで幕を降ろす。

柴咲コウが健気にしっかり生きてる女の子をリアルに好演。彼女のちょっとした心遣いにこっちまでウルウルきちゃう。織田裕二はいつもの熱血漢ぶりは控えめだけど、こんなにいけ好かない役柄も珍しい。それが変わっていくのは、上手いなと思った。
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