みりお

大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]のみりおのレビュー・感想・評価

3.8
男女逆転大奥シリーズの中で最も切なく、苦しく、美しい愛の物語だと思う。

綱吉と右衛門佐、2人とも人間性で言えば、あまり褒められた方ではない。
傲慢で、したたかで、自身が人からどう見られるかよりも、自身の保身や、出世や、欲を重視する2人。
その2人が初めて感情のままに、損得なしに、他の何を差し置いても求めあったのがお互いだった。

すごく遅すぎたのだろう。
早く、早く通じ合ってほしかった。
なぜ「人」らしく、自分の気持ちに正直に生きられなかったのか、という切なさが止まらない。

だが、同時に強く感じる。
"他の何を差し置いても共にいたいと思える人との時間"と、"自分の欲や一時の感情"を天秤にかけたとき、人はどちらを取るのだろうか。
仕事が忙しく、家に帰っても寝るだけ、たまにの母との電話を早く切って寝ようとする。
これらは綱吉や右衛門佐の過ちと同じことだ。
自我と自由を履き違えてはいけないと感じさせる作品。
みりお

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