TAK44マグナム

メガゾーン23 PART IIIのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

メガゾーン23 PART III(1989年製作の映画)
2.5
OVA(オリジナルビデオアニメ)の金字塔「メガゾーン23」のシリーズ3作目。
前作から数百年後、地球唯一の人類居住地である「エデン」で繰り広げられる「システム」対「ネットジャッカー」の戦いを軸に、エイジ・タカナカの活躍を描くというもの。

前編「イヴの目覚め」及び後編となる「解放の日」の二篇で構成、前作までとは期間がかなり空いたために製作陣にも違いが見られますが、サイバーパンクをコンセプトに、シナリオ的には苦しい部分が散見されながらも世界観の統一には成功しています。

一作ごとにキャラクターデザインが変わるのがシリーズの特徴になってしまっていますが、本作では「機動戦士ガンダム/逆襲のシャア」の北爪宏幸が担当(ライバルキャラのシオンなんて、変なサングラスかけてるけど殆どシャアみたい)、美樹本晴彦デザインのイヴも他から浮かないようにアレンジされています。


天才ゲーマーでありハッカーでもあるエイジは、エデンを統括する「E-X」に入局する。
折しも、ネットジャッカーたちによるテロ行為が横行しており、エイジは武力でこれを制圧するために開発されたマシンソルジャー「E-Xガーランド」のパイロットに任命される。
不穏な空気がエデンを覆う中、エイジは美少女リョウと知り合い、恋に落ちる。
しかし、リョウはネットジャッカーの中心的存在であるシオンと繋がっていた。
シオン操るマシンソルジャー「ハーガン」と戦闘になるエイジ。
戦いはエイジの勝利で終わるが、シオンはエイジに「イヴが待っている」と告げる。
エイジこそは、かつての矢作省吾がそうであったように、ピュアなライフデータを持つ「7Gのオペレーター」だったのだ。
エイジはイヴに会いに行くが、その間にもエデンを2つに切り裂く内戦の火蓋が切っておとされようとしていた・・・・・


かなりサイバーパンク色が濃厚で、人々がネットによって介して生活している世界が舞台となっております。
しかしながら、一般の人々の様子は殆ど分からず、エイジやシオンの周辺のみの描写で進行します。
前編と後編では、かなり趣が異なり、特に後編においてはエイジとリョウがラストまで接触しないので二人の関係性が観ているこちらからすると薄く感じてしまいますね。
と言うか、エイジとイヴ以外は、どのキャラクターの関係も酷く薄いので、クライマックスもなんとも盛り上がらない。
これは多分、少なくとも30分で1クール分ぐらいは必要な物語なのに、無理やり端折って100分におさめているからではないでしょうか。

なので、サイバーパンク特有の専門用語が出てきても説明がないので良く分からないままだったり、一体ぜんたい何が起きていて、キャラクターたちが何をしようとしているのか、そんな根本的なところも理解できないという弊害が生じてしまっています。
加えて、前作を観ていないと本当にワケがわからないと思いますので、パートⅠ、パートⅡ共々鑑賞必須だと思います。

そんな、決して敷居が低いとは言えない本作ですが、面白いかというと微妙なのも哀しい事実。
製作当時には革新的であったサイバーパンクな描写の数々もいまとなってはクラシカルですし、何よりもアニメの生命線とも言える作画レベルがかなり悪い。
カラーがベッタリしてしまっていたり、コマ抜きが激しいので動きがぎこちない場面が多々あります。
キャラクターのアップはまだ見られますが、製作期間にまったく余裕のないテレビアニメならまだしもOVAでこれでは本末転倒。
OVAが乱立された当時の内情が垣間見えるようですね。

それでも話の都合上、主役メカであるガーランドがシリーズ中で一番、戦闘で活躍します。
とは言っても、あまり流麗に動きまわるわけでもないので、ガーランドやハーガンが魅力的に描かれているかというと、そうでもないのがまた辛いところ。

美少女アイドル的な側面からすると、前作までほど歌そのものがフィーチャーされておらず、ただイヴが歌っているMVが街で流れているだけといった感が強く、後編ではヴァーチャルアイドルではない本物のイヴが登場するので、いよいよアイドルや歌といった要素はどうでもよくなります。
主題歌や劇中歌を歌い、イヴの声をあてたのは当時はまだアイドルであった高岡早紀。
そういえば、昔、高岡早紀とは割とご近所だったことを思い出しました。勿論、面識があったわけじゃないですけれど、高校の時の彼女が高岡早紀と同じ中学の出身でしたよ。
・・・って、全然関係ない話ですが、それだけでも身近に感じられたものです。

それはともかく。

物語的にも、パートⅡ以後の矢作省吾の運命が厳しいものだったことが判明したりと、前作までのファンであればあるほど哀しい気持ちになってしまうわけで、作るなら作るでもう少し何とかならなかったのかなあ・・・と。
現在、製作準備中だという新作は、まるで違う方向性で前作の続きを描く予定らしいので、本作が黒歴史化する可能性も無きにしもあらず。
ファンとしては、シリーズの行く末が気になる次第でありますね。


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