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別離のatsukiのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
4.7
【探偵ごっこ】

「わたしは観客の理解力を信じています。わたしの映画は言ってみれば地図を渡して目的地を示すようなもの。どのようにたどり着くかは観客の想像力に委ねたいのです」と監督はインタビューで言った。

全てを見せない欠けた映像。
違う国、違う文化、違う法律の中で我々は探偵となり、この映画を探っていく。何故そうするのか?何故そうなるのか?この映画を見ている内に我々は自然と推理を始めている。

「はじまりは、愛するものを守るための些細な“嘘”だった―」

ポスターにも書かれたこの一文の通り、嘘や秘密が渦巻くこの映画に興味がそそられる。確かにこう見れば一方は悪だし、こう見ればもう一方も悪である。しかし、誰も悪くはない。守りたいという気持ちから生まれる嘘や秘密が複雑に絡み合ったことによりそこに生まれるのは結果的に「悪」なのだ。その複雑なところに宗教や法律による複雑さが更に絡んでくる。

最初の監督のコメントをもう一度見て欲しい。映画を通して監督から地図を渡される。ラスト確かに目的地は見つかるのだが、そこはなんとも言えない場所でありユートピアではなく、ディストピアの様な場所だろう…イランの問題を浮き彫りにして、否定してる様に見えて肯定も感じる非常に巧みな脚本。やはり世界中の賞を何十個も取ってきただけあるなと思わされる作品であった。
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