マルデライオン

ティファニーで朝食をのマルデライオンのレビュー・感想・評価

ティファニーで朝食を(1961年製作の映画)
3.6
午前6時、ニューヨーク5番街。高すぎるビルの間から漏れる美しい朝焼けは遠い。信じられないくらい雑然とした部屋から見事に着飾って飛び出てきた彼女の眼差しは、サングラスで隠れて見えない。特に楽しそうでもない。何かを挑発しているようにすら見える。誰もいないのに、いったい誰を?
もしかしたら、ティファニーのショーウィンドウに映る自分をサングラス越しに見ているのかもしれない。家ではだめなのだ。あまりにも耐えがたい。果てしなく伸びるニューヨーク5番街の、このショーウィンドウの前でこそ、彼女はそっと自分の姿を確認できる。名もないまま、ずっと檻に閉じこもったままの自分を。


彼女は決して妥協することなく、居場所を探し続けるだろう。O.J.バーマンの言う「紛い物」を心底信じる強さを持つ「本物のまやかし」であるホリーは、もし居場所があるとすればそれは、ムーンリバーのようなこの世界を一緒に渡ってくれる誰かの隣だと信じているのかもしれない。
今はまだ、14歳の頃から変わらぬ孤独に自分で自分を閉じ込めて、野生の鳥のように、空の上であてもなく彷徨い続けているとしても。
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