マルデライオン

ジョーカーのマルデライオンのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
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心から世界を信じようとするからこそ、世界に裏切られることができる。

信じることができなければ、胸の痛みを感じることもできない。1人きりでは何も感じられないからだ。


彼は世界へと開かれていたのだと思う。だから痛みを感じることができた。彼の意志ではなく、世界の応えとして、悪が芽生えた。

彼は身を任せきっていたのだと思う。本当に心優しい人だ。コントロールすることを知らない人だった。一言でさえ、強制的に聞かせようとしなかった。

心からの叫びが、信じきって発せられた静かな叫びが、かき消されてしまうとき、人は自分の意志とは関係なく絶望してしまう。応えを知るからだ。世界の応答によって、あるいは世界が応答しないことによって、絶望する。

そこに本当の悲しみがある。臆病者の悲しみとは違う、勇者の悲しみがある。


世界に触れるとき、人は笑う。それは蔑みではなく、愛おしさの表れなのだ。
マルデライオン

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