このレビューはネタバレを含みます
「ローマの休日」と並ぶ、オードリー・ヘプバーンの名作。
まあ、7割くらい彼女の魅力から成る映画だが、実はジョージ・ペパードの魅力なくしてそれは成立しないということを忘れてはいけない。
冒頭のタイトルをまんま表現した有名なシーンは、態とらしくも可愛らしいので、やはり憎めない。
だが、やはり特筆すべきはラストだ。散々ペパードを振り回したクセにブラジルの富豪の方に走り、しかし捕まってしまい、八方ふさがりで自分を見失ったヘプバーン。これをいかに表したか?
猫である。劇中、これまた散々、態とらしく意味深に現れる猫のカット。つまり、コイツはヘプバーンの分身である。その証拠に、猫には名前を付けず、「Cat」と呼んでいる。ここでのヘプバーンも広いNYにおいては名無しの存在なのだ。
それが、タクシーのドアを開けた途端、逃げてしまう。猫=自分を見失うのである。
雨の中、「Cat、Cat!」と、必死に猫を探すヘプバーン。それを後ろから見つめるペパード。
猫=ヘプバーンはしかし、しばらくしてから見つかる。「自分自身」が見つかった時、背後に立っていたのは誰だろう。
そう、他でもないペパードただ一人なのだ。この映画は、ジョージ・ペパードなくして成立し得ない。