モールス

こうのとり、たちずさんでのモールスのレビュー・感想・評価

こうのとり、たちずさんで(1991年製作の映画)
4.5
私が今まで観た作品の中では、これほど「国境」というテーマを鮮明に映し出したものはありません。島国に住む我々としては、陸繋がりの国境が如何に複雑なものなのかを教えられます。本作では、その国境を越えて命懸けでギリシャに入国した人々の苦悩と悲しみが描写されてます。
冒頭、主人公のテレビ局のスタッフが軍部の大佐に国境警備についてインタビューをします。その時の大佐がこうのとりが片足で立つがように、国境を一歩越えれば苦難か銃殺が待ってると言うところに「国境」のテーマを最初から明確にしてるところは私は気に入ってます。それから話しは主人公たちが偶然撮影した映像から一昔前に失踪した政治家であることを割り出して、その男の取材することで進んでいきます。
それからは重みのシーンが続きます。政治家の元妻は夫に会っても「彼ではない。」と…。政治家の娘は国境で渡れない河を挟んで結婚式でこの先会えないかもされない新郎と永遠の会いを誓ったりと…。万感の想いを込めて果たした再会や望んだ結婚式は訣別を告げるようだったのが切なすぎました。そこには祖国を捨てたことの重さが凝縮されてました。
そして迎えるラストシーン は、電線工事で電柱に登る人々の統一性が見事であります。この電線工事は難民の人々が就いてる仕事で、劇中でも紹介されてます。難民たちが電信柱に登る姿は、こうのとりが空を飛び立つこと喩えてるようでした。
冒頭とラストのきめ方がアンゲロプロス監督らしい☆この監督さんの作品は人物よりストーリーが主人公なんだと改めて思いました。
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