粗忽者

火垂るの墓の粗忽者のレビュー・感想・評価

火垂るの墓(1988年製作の映画)
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 大学の講義の課題として出たため勇気を出してやっと試聴しました。原作よりもずっしりと心に来て、画面から目を逸らしながらもなんとか完走する事ができました。観た結果、観てよかったなと思います。

 この映画は原作と比較すると、よりエモーショナルな部分に力が入っているため、さらに心を抉る内容になっています。原作では句点が多めで淡々と状況を描写していくのに対して、アニメだと表情や身体の動き、台詞の抑揚で登場人物の感情がありありと伝わってきてどうしてもやるせない気持ちに襲われてしまいます。しかし小説と同じく残酷な描写は残酷に描きます。この徹底した姿勢に高畑監督が本当に描きたかった物、伝えたかった物が現れていると自分は思いました。

 自分が作中で最も胸を打たれたのは、節子が母の死を知っていたという事実を受け止めて、今までろくに泣いてこなかった清太が涙を堪えきれずに流してしまうシーンでした。なぜ彼がここで泣いたのかを想うと、本当に辛いです。原作では「はじめて清太、涙がにじみ」と言った表現になってますが、より印象的なシーンになっていました。
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