粗忽者

悪女/AKUJOの粗忽者のレビュー・感想・評価

悪女/AKUJO(2017年製作の映画)
3.8
顔と長回しについて

多くの映画を観ていても、鮮烈に印象に刻まれる冒頭シーンというものがいくつか存在する。この映画の冒頭がまさしくそれに該当する物だろう。

主人公は一人称視点でとにかく殺戮のかぎりを尽くす。どんな玄人のFPSゲーマーだってこうは行かないはずだ。そしてその殺戮シーンは長回しの1カットで演出されている。少し前に鑑賞した「1917」という映画は全編1カットでの撮影で、自分はそのカメラワークの意図として「止められない使命」がある物だと勝手に解釈しているが、今作の場合の意図は「止められない憎悪」だと思った(もしも意図があるならば)。つまり冒頭シーンの長い間、彼女の視点で憎悪の殺戮が演じられているのだ。

しかし、主人公の女性の顔が鏡に映った瞬間。それまでずっと一人称だったカメラがなんの違和感もなく三人称視点に切り替わる。自分はその時、この映画の大きな一つのテーマとして「顔」がある事を直感した。そしてラストシーンを見る限り、その直感は正しいのではないかと思っている。

正直、深く語るにはまだまだ考察が足りないし、めちゃくちゃに気に入った作品というわけではないけれど、ただのアクション映画として観るだけでは勿体無い作品なんじゃないかと自分は思います。
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