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ひろしまの教授のレビュー・感想・評価

ひろしま(1953年製作の映画)
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とにかく作品の持つ「志」が映画を通して溢れている。血が滲み出るように、あるいは噴き出してくるかのように切実に「伝える」べきという意識が伝わってくる。

まず本作はその「原爆投下直後」の広島を徹底的に再現することに挑んでいる。
まだ原爆投下から8年の広島で、その当事者たちも含み、この浅からぬ記憶の中で「風化」と戦うということを課しているかのように容赦なく、そして延々とその「光景」を映し出す。
「言葉」で語られる戦争以上に、フィクションであったとしても、丹念に丹念に視覚にダイレクトに表現される「地獄絵図」。

倒壊した建物、引き起こされる火災、焼死した者、建物の下敷きになった者、一瞬で街は壊滅したとしても、そこに生きる人たちは誰に助けを求めることも出来ずに、痛みと恐怖と絶望の中で、どんな風にそこにいたか、というだけでも本作は圧倒的。

そして。世界も、日本も、ましてや広島県民たちも。そして「お国柄」も含めて、意識して「忘れよう」とする姿に取り残されていく「被害者たち」をメインに描いている。
「戦後」は訪れても、戦争によって失ったものや、癒えない傷以上に、その「嫌な思い出とは早く訣別したい」という「日本人」が浮かび上がってくる。
映画の構成自体はどうしても大味な部分は否めないが、テーマの部分を明確に、そして強く主張する為に「原爆」の恐ろしさと、「その後」の恐ろしさを現実に沿って炙り出したという意味で「壮絶」という言葉に尽きる。
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