Kuuta

回転のKuutaのレビュー・感想・評価

回転(1961年製作の映画)
4.0
「真実を話せばいいのよ」「真実…?」

ホラー映画の家系図を描こうと思った時に、今作の幽霊表現(遠くで立ち尽くすが何もしてこない、カットが変わると消える)は絶対に外せないだろう。教科書的な意味でも重要な作品だが、脚本、演技、撮影と高いクオリティでまとまっており、ホラー映画の古典と呼ぶにふさわしい良作だ。

脚本に引き込まれた。幽霊は実在するのか、家庭教師のギデンズ(デボラ・カー)の妄想なのか。

彼女はいわゆる“オールドミス”で、男性経験に乏しい。冒頭の金持ちおじさんとの面接から変な感じ。屋敷で以前淫らな事があったと聞いて、妄想が爆発してしまっている。亡くなった前任の家庭教師が庭師と良い関係だったと知り、前任者への嫉妬心から行動しているようにすら見える。

彼女は幽霊についての「真実」にこだわり、秘密や曖昧さを残そうとしない「厳格」なキャラクターにも見えるが、彼女が自らの内心を吐露する事は無い。

結局、あの家の中で最も「秘密」に固執しているのは彼女自身。だから、後半で最も現実離れした存在になってしまうのだろう。「あなたが来てから子供がおかしくなった」と、女中さんが繰り返し客観的なツッコミを入れてくるのも上手い構成だ。

デボラ・カーの演技に魅了される。オープニングの彼女の目はほとんど黒目で、いきなりヤバい雰囲気が漂っている。少年とのキスシーン、驚き、否定したい気持ち、満更でもない感、色んな感情を表情一つで表現している。幽霊がいるかいないよりも、家庭教師の狂いっぷりが映画の主題のように感じるのは、彼女の熱演による所が大きいだろう。
大人が乗り移ってしまった少年の演技はエクソシストをちょっと思い出した。

撮影もとても良かった。あの世との境界を映し出す水面、打ち付ける雨、蝋燭の火。薄暗い洋館の不気味さを丁寧に描いており、ゴシックホラーとして堂々たる映像だった。撮影はフレディ・フランシス。あまり意識したことの無い人だったが、色々撮っているようで、この人の名前で作品追ってみようかな。80点。
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