竜平

ファンタスティック Mr.FOXの竜平のレビュー・感想・評価

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)
4.1
元泥棒のキツネ「ミスター・フォックス」が引き起こす、家族や動物仲間や人間たちをも巻き込んでの大騒動。ウェス・アンダーソンによるストップモーションアニメ。

どちらかと言えば映画は実写派、なもんでウェス作品の中でもずっと後回しにしてた今作をようやく鑑賞。脚本にはノア・バームバックもいたり。まず声優陣がめちゃ豪華。主人公がジョージ・クルーニーなのは一発でわかるとして、なんとも魅力的な声で演じるメリル・ストリープ、ウェス作品常連のジェイソン・シュワルツマンやビル・マーレイやオーウェン・ウィルソン、そしてウィレム・デフォーなども。初っ端からテンポ感にシュール具合に可愛らしさに「これぞウェス・アンダーソン」な作風が炸裂、もう好きな人はすぐに心掴まれるはず。ストップモーションアニメで描かれていくのが「キツネ」を主とした動物たちの知られざる世界。主人公は元泥棒で、とこれは野生の本能に起因してたりするんだけど、こんな感じの全編通しての設定というのが微笑ましく、また地味に緻密だからおもしろい。普通に人間たちも暮らしていて、人間時間とキツネ時間とで体感が違う的な字幕の入り方とか微笑ましい。

妻と息子と暮らしているところにひょんなことから泊まりに来るのが秀才の甥っ子。彼と比べてあまり目立たない、というか能力的に劣ってしまっている息子、そこで見えてくる親子の確執、それぞれの交流の様子とその中にある心境の変化など、しっかり人間ドラマ、もといキツネドラマがあるから侮れない。同じくウェス作品の『天才マックスの世界』や『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』にもあったようなやつ、ませてたりグレてたりの子供やら、所謂ダメ親父やら、欠点の部分を魅力的に見せてくれる。で、ちゃんと動物の設定の上で揉めたり悩んだりしていくからこれまたおもしろい。どのキャラも何気に表情豊かでストップモーションながらアップの画でグッとくるし、やがて心を通わせるような人間模様、もといキツネ模様にちょっぴり感動、とまではいかずともホロッとさせられるという、うん、正直ナメてた。

原作が児童文学でその著者がロアルド・ダールという、この原作&監督ってのは最近NETFLIX配信の短編4部作でもタッグを組んでいて、この頃から相性が良かったんだなと今更ながら理解。そんで今作は実写や普通のアニメでなくストップモーションアニメだからこそ成立してる作品だなと感じる。味と温かみに溢れた素晴らしい出来。まさしく“ファンタスティック”。オススメ。
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