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ファンタスティック Mr.FOXのdeenityのレビュー・感想・評価

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)
4.5
ウェス・アンダーソンの手掛けるストップモーションアニメ。一つ一つの動きに味が出て、それだけでも魅力的なのだが、加えてウェスの表現力が加わると、一層本作ならではの個性が出てきますね。
とにかく圧倒的な画力が素晴らしい。そのワンカットにどれだけの情報量をぶちこんでいるのだと驚かさせる。溢れんばかりのユーモアや愛嬌、そして彼ならではのセンスが歴然とワンカットに表現され、それが繋がっていく様は、アニメーションとしての最高峰と呼ぶに相応しい完成度だったと思う。

そして愛嬌のある動物たちが登場するわけだが、このキャラクター像も魅力的。
特に魅力的なのはやはり主人公である父親で、彼は身体能力が高く、頭も冴える。人間からもあっという間に盗みを働くことができるし機転が効く。これを本作では野生の性だと表現するのだが、家族という守るべきものができたときに、真っ当に働いてちまちま稼ぐか、一獲千金で盗みをして楽しい生活を送るか、そこの葛藤も面白い。容貌こそキツネではあるが、人間らしさもあり、ともすれば家族のために必死で働くのが正しいかのようにも思えるが、実際は才能ある野生のキツネなのであり、設定として彼の行動は非常に理に敵っていたと感じた。

また、息子もキャラクターとして味があった。父親が有能だからこそ自分も才能があると信じて疑わず、他と同じとされることを認められない。
この自分のアイデンティティと向き合うという葛藤も実に人間らしく、違いを認めることの大切さにも気付かされ、共感できる部分も多かった。

アニメーションだからこその見やすさであったり表現力であったりが備わっており、同時に自分と似たようなキャラクターに照らし合わせて考えさせられる。アニメーションとして求められる最高峰の作品だったと思う。
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