中

刑務所の中の中のレビュー・感想・評価

刑務所の中(2002年製作の映画)
4.1
刑務所生活をスローテンポでへんてこに描いてる。ストーリーらしいものはないのに飽きひん。
緊張と緩和のお手本というか、受刑者ってフリが効いてるからちょっとした引っ掛かりがぜんぶ面白い。刑務作業、食事、自由時間、印象的なシーンを挙げればキリがない。看守への「願います」コール、グルメ番組ばりの料理描写、免業日の映画鑑賞とアルフォート。
喜怒哀楽どれも笑いに繋がるんやな。劇中で看守に、修学旅行じゃねえって怒鳴られてたけどほんまそんな感じの受刑者たち。罪を悔いたりする感覚が一切なくて、ただ人生のとありひとときって感じで過ごしてる。すごいええ。

数日くらいなら入ってみたいって思うのはなんでなんやろ。縛られることで可能性に思い馳せへん生活を望んでる気持ちがあるからかな。
独居房で誰とも会わず頭も使わず黙々と作業するのが性に合ってるって言う主人公の気持ちが数%くらいは分かる人って結構おるんちゃうかな。
毎日決まった時間に決まったことをして規律正しい生活をすれば、しゃんとした身体と精神が身につくよな。そういうのってちょっと魅力的やん。そう思うのは心の弱さやと思うけど。

免業日に「ゆったりと過ごす」感覚って現代人にあるかな。平日はあくせく働いて、競争して、夜にはくたくたで寝るだけ。休日は寝て体力を回復させるか、平日分を取り返すかのように遊ばなあかんっていう義務感に殺される。
刑務所内ではいくらでも寝られるって描写があったけど、彼らには可能性がそもそもないから怠くなって眠れるんやろうな。
缶コーラ片手に箱ごとアルフォート食べながら映画観てみよかな。でも娑婆やと無理やな。だって他の美味しいものも食べたいし食べ過ぎたらその後に響くもん。なんか一種の病気やな。

あと、言及するまでもないけど俳優陣最高。

原作の作者が実体験を書いてるらしいけど、それを感じさせる描写がいっぱい出てくる。お坊ちゃん受刑者は小指を立てながら石鹸を持って便所に入るとか、意味わからんけど印象に残ってる。いいとこの家のお坊ちゃんでB型で受刑者でもう怖いものなんてないでしょう、みたいな独白もなぜか残ってる。

タイトルの副題になってた、doing time は、服役するていう俗語らしい。時間を過ごす=服役する、なんとも英語らしい読み方やと思った。
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