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トラスト・ミーのとぽとぽのレビュー・感想・評価

トラスト・ミー(1990年製作の映画)
5.0
なぜ?私/僕に優しい
毒親に仕事、明るい前途を奪おうとするものから逃げて。10代の妊娠、中絶に虐待DV。お洒落でかわいらしいパッと見とは裏腹にヘビーな題材を扱っているにも関わらず、ハル・ハートリー監督組常連な2人が感情を込めないようなセリフ回しで、あくまでハル・ハートリーらしく淡々としたテンポでコミカルに描く人生模様とオフビートなコメディ(ドラメディ)。つまりアキ・カウリスマキっぽい。
知らない語彙は多くメガネをかけることを恥ずかしがり、妊娠し父親を心臓麻痺で殺してしまった娘と、テレビとセックスを嫌悪する男。家を出ていくべき。一生コキ使ってやる!したくない仕事を続けると心が死んでいくけど、それをするのが生活ひいては人生か。嫌いな仕事をしてはいけない。現実的のどこがいい?信じることをするには覚悟が必要。このドン詰まりの中で自分たちの未来を信じられるか?

傷付いた若者たちの居場所探しーーーー自ずと惹かれ合う魂の不器用すぎる揺れ動きがロマンチックでまるで魔法にかかったよう。テレビを嫌い仕事をコロコロと変えながら支配的な父親の元で暮らす男と、高校を中退して子供を妊娠するものも彼氏に捨てられ(意図せず)父まで殺した女。そんな二人の不思議な出逢いが織り成すドラマ。変わらぬ表情のまま飄々と早口だったりするのに何より多くを語るようなカリスマ性は真似しがたくはね除けがたい生来の魅力を放っている。ハル・ハートリーという存在を知り彼の作品に出会ってからずっと見たかった作品。このためにVHSデッキを買おうかと思うほど想い焦がれていた。だってボクはいつだって彼と彼の創造物を信頼=トラストしてきたから。やっと見られたという念願叶ったということも多少あるかもしれないけど、やっぱり波長が合う気がして、もう画面に映るすべてが愛おしい。お洒落って言えるのかもしれないけど決してそれだけじゃない。むしろそこに言葉にならない感覚的な何かがきちんと真空パックされたみたいに詰まっているからかけがえのない一瞬になってく。どこかシュールというか風変わりで一見淡々としながら文学やあらゆる表現に精通していて人間の機微に対しても面白く剥き出しな観察を描いてくれる語り口の虜。眼鏡。

「テレビは大衆の阿片だ」「元から壊れてた」「実りのない会話だ」「テレビを修理する」"I don't watch TV."「ガンのもとだ」「経験して初めて知ることができる」「近視か?眼鏡は?」「野暮ったくなる、司祭みたいに」「司祭は好きだ」"I am ashamed."若いことが恥ずかしい、愚かなことが恥ずかしい"I quit my job."「ここを出よう、ここで子育ては無理だ」「中絶した、結婚したくない」「そばにいた、それだけよ」
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