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キャバレーのturkeyのレビュー・感想・評価

キャバレー(1972年製作の映画)
5.0
背徳、退廃、暴力をナチズムのもう一つの側面と見るなら、「地獄に堕ちた勇者ども」、「愛の嵐」の系譜に連なる作品。
キャバレー「キットカット・クラブ」で繰り広げられるショーの世界は、背徳と退廃の毒花が咲き乱れ甘酸っぱく妖しい腐臭が充満した裏の顔、そして表の世界ではナチスの台頭による暴力が満ち溢れてる。
映画は主役たちの生きる現実世界に反射するようなキットカット・クラブで行われるショーの世界を差し込みながら進行して行きます。
 受難のユダヤ人とナチスの退廃と暴力、如何にもアメリカ受けの教条主義的な構図で、人に依っては陳腐と言う人も居るだろうけど僕はそれ程悪いとは思いませんでした。

しかし、この作品の素晴らしい所はそこじゃない、キットカット・クラブで連夜、繰り広げられるショーの数々こそがこの作品の見所。
ラスベガスで鍛えられた一級のエンタティナー、ライザ・ミネリのパフォーマンス、そのライザ・ミネリさえも喰ってしまいそうなMC役のジョエル・グレイの達者さと存在感。
この二人の舞台を観てるだけで、この作品は元が取れます。
二人以外でも、ヒトラーユーゲントの美青年が歌う「Tomorrow Belongs To Me」に聴衆が雷同していくシーンは中々に印象的なシーン。(どっかで観た気もするけど)

 歪んだ鏡面に写し出される歪んだ世界。
 このキャバレーの世界こそが現実であり、フィナーレを飾る「life is a Cabaret」(「人生はキャバレー」)。
 音楽映画らしからぬ鬱な世界で後味の良い作品では有りませんが、僕はそれでも名作だと思っています。

※「life is a Cabaret」のエルシーを語る部分、♪酒とクスリで死んで、人は嘲笑う、でも彼女の死に顔は女王のようだった、私もそうありたい♪
 何だかJ・ガーランドの事のような・・・。
 L・ミネリにとってJ・ガーランドの娘と言う呪縛から脱した作品とも思います。
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