たく

ラブ・レターのたくのレビュー・感想・評価

ラブ・レター(1945年製作の映画)
3.6

悪気のないラブレターの代筆がもたらす思わぬ悲劇と恋のすれ違いを描く、ウィリアム・ディターレ監督1945年作品。ミステリーとベタなメロドラマが絶妙に融合した話で、映画デビュー間もないジェニファー・ジョーンズの初々しさと、ディターレ作品常連のジョゼフ・コットンの抑えた演技が良かった。タイトルから岩井俊二監督を連想したんだけど、まさかの「別人による手紙」という要素が共通してたね。

戦友のロジャーから代筆を頼まれたアランのラブレターが相手のヴィクトリアの心を鷲掴みにし、戦地から戻ったロジャーがめでたくヴィクトリアと結婚したと思ったら‥という展開。手紙の代筆者と本人の性格が全く違うというシチュエーションは、「ハーフ・オブ・イット」でコメディ演出として描かれてたけど、本作ではある悲劇につながる。ここからシングルトンがアランに惹かれていくメロドラマ要素に、彼女に関してある事実が明らかになるというミステリー要素が絡まっていく筋書きで、逢ったばかりのアランにシングルトンがほとんど一目ぼれのような感じで最初から惹かれてるように見えるのが、いささか強引に感じた。

記憶喪失のままのシングルトンと幸せに暮らすのか、彼女が記憶を取り戻してシングルトンとしての存在が失われるかの悩ましい状況にアランが置かれるんだけど、なんか贅沢な悩みに思えちゃったね。シングルトンを幼少期から育てたおばのビートリスが彼女の守護者役で、死期が近づくまで真実を隠してたのが彼女への執着を表してて怖かった。ラストは観てて恥ずかしくなるくらいのベタベタのメロドラマ演出で、こういうのもたまにはいいね。
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