救済P

MEMORIESの救済Pのレビュー・感想・評価

MEMORIES(1995年製作の映画)
3.3
大友克洋7年ぶりの監督作品でオムニバスアニメ映画。
『彼女の想いで』、『最臭兵器』、『大砲の街』の3作から成る。

1作品目、『彼女の想いで』は機械によるホログラム映像と現実との境界を曖昧にしたSF作品。救難信号を探知した宇宙船の乗組員は巨大な遭難船に乗り込むがそこで怪奇現象に遭遇するという内容。
現実を重要視するかそれとも幸せな夢の中で生きるかの選択を描いている。今見るとシナリオにそれほど目新しさはないが、大友監督作品なので流石の作画力を誇る。オペラ歌唱シーンにも力が入っており、映画館で観ていればさぞ迫力もあったことが窺える。

2作品目は『最臭兵器』。誤って新薬を飲んでしまった主人公は身体から尋常じゃないほどの臭気を振りまく人間兵器と化してしまう。自覚のない主人公と彼を取り巻いて国が動く壮大なギャグアニメ。
なにが起こっているのかわからない主人公を余所に陸海空軍が出動しNASAが新兵器を投入し総理が決断を下す。「ただ臭すぎるだけの男」だがその威力が凄まじい故に世界を動かす「もったいなさ」が魅力。圧倒的作画力もその「もったいなさ」の演出に一役買っている。登場する車両や航空機は実在するもので無駄に細かい。

3作品目『大砲の街』は大砲を撃つためだけに機能している街の日常を描いた作品。全編を1カットのみで構成していることでも知られる。
『ひるね姫』や『フレッシュプリキュア』のような社会的なディストピア感漂う「大砲の街」では大砲を撃つためだけに街が機能しており、大砲は戦争のために使用しているのだとされている。作画は丁寧かつ大砲発射までのディティールは細かい。少年の「どこと戦争しているのか」の質問にあるように含みを持たせた終わり方をする。色々と考察要素はあるが、ディストピアの中の日常生活を丁寧に描いているということで好きな人は好きだと思う。
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