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けものみちのbluetokyoのレビュー・感想・評価

けものみち(1965年製作の映画)
3.6
長いけど面白い。事情があって、一気には見なかったけど、普通に見たら、一気に見れてしまうだろう。
主要な登場人物が、全員、悪人、というか、まだ、見ていないけど、アウトレイジとは、ちょっと、違うかもしれない(いや、同じかも)。
登場人物は、それぞれの立場、ポジションの中で、なんとか、やっていこうとしていただけなのだろう。だから、見る者は、それなりに感情移入できるわけだ。

ただ、原作通りなのだろうと思うが、事件が多過ぎて、しかも、台詞で説明しているので、何がなにやら、わからないようにも思えるので、登場人物が消された段階ごとに整理してみる。

最初に犠牲者は、主人公の成沢民子の夫、寛次である。病気で寝たきりだが、なぜか、性欲は強いらしく、民子に性的な虐待行為を日常的に行っているらしい。現代ならアウトな気もするが。寝たきりの生活でやや頭がいかれている可能性もある。
民子が放火殺人をするのだが、動機がいまいちな部分もある。偶然に出会った、ニューローヤル・ホテルの支配人、小滝章二郎に、自分の道具になってみませんか、人生を変えるチャンスですよ、みたいに誘われるわけだ。で、条件は、係累を消すことだ。つまり、戸籍から自由になることらしい。それが成功の条件らしいのだ。
次の犠牲者がニューローヤル・ホテル823号室の宝石デザイナーの若い女性である。ただ、どうも、宝石デザイナーというのは偽りで、ようは、ホテトルのような存在みたいだ。
動機は、高速道路公団総裁の香川を辞職に追い込むためらしかった。どうも、香川は客だったのかもしれない。
民子も同じで、弁護士の秦野の紹介で、政財界を牛耳る鬼頭洪太の女になることだったわけだ。
次の犠牲者は、鬼頭洪太の屋敷の女中頭、渡部米子である。民子が現れて、ポジションを奪われた恨みで、鬼頭洪太に毒を盛ったらしい。
犯人は、鬼頭洪太の屋敷の下男だか、用心棒だか、やばい仕事専任なのか、黒谷隆という男らしい。
次の犠牲者は、久恒義三という刑事。殺された時点では、元刑事だ。最初の、民子による放火殺人から捜査に当たっている。民子の事件を捜査しているうちにニューローヤル・ホテルでの若い女性の殺人事件、小滝、秦野弁護士、鬼頭洪太たちの疑惑、最後には、渡部米子の殺人事件に行き当たる。だが、あまりにも危険な部分を嗅ぎまわるので、上層部の圧力により、警察を辞めさせられる。それでも、捜査を続け、渡部米子の線を追っているとき、黒谷隆に殺害される。
次は、鬼頭洪太。殺害されたわけではなく病死だが。
次は、秦野弁護士。鬼頭洪太の後ろ盾がなくなったので、あっさり殺される。報復ということもあるが、一番大きいのは、口封じだろう。
次は、主人公である成沢民子。小滝章二郎と逃亡途中に、黒谷隆に殺される。
次は、ついでに黒谷隆が小滝章二郎に殺される。
最後に生き残った、小滝章二郎の高笑いで終わりである。

久恒義三刑事は、成沢民子の色香に迷って、彼女をレイプしようとするわけだが、このシーンは、いっさい、いらないと思われる。原作に忖度したのかな。
最後が、小滝章二郎の高笑いというのも意味不明だ。逃亡途中でそんな余裕はないはずだが。黒谷隆とのつながりも唐突過ぎる。黒谷隆は、どう見ても、秦野弁護士と同じなので、危険な立場なんだが。

おそらく、映画としても長いのだが、それでも、原作を映画化するには、尺が足りなかったということだろう。そのために、いくつかの事件や登場人物を削り、筋の変更もすべきだったと思われる。たぶん、原作の関係で無理だったと思われるが。
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