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恋愛日記のBaadのレビュー・感想・評価

恋愛日記(1977年製作の映画)
4.6
トリュフォーの中でも特にお気に入りの一本のひとつでしたが、久しぶりにDVDで見直してみました。遠い昔、劇場で仰角で仰ぎ見た女性達の脚の印象が強烈で、「女性の脚に魅せられて恋愛遍歴を重ねる男性の映画」だと思っていましたが、それだけではない広がりを持った作品だった様です。

美脚の数にこそ圧倒されてしまいますが、脚のショットの撮り方自体はさほどフェティッシュなものではなく、ロメールの『海辺のポーリーヌ』やブニュエルの『ブルジョワジーの密かな愉しみ』等の圧倒的にエロティックな脚のイメージと比べるとむしろそっけない印象で、登場する女性の人格の一部として脚というイメージでとらえられている様です。

どうやら、この映画の主人公の追い求めていた物は、「女性の脚」そのものでは無く、「脚を媒介とした女性からの承認」に他ならないように思われるのです。

にもかかわらず、相手からの承認があっても無くても、美しい脚に自動的に反応してしまうところが、この主人公の特異なるところなのですが、顔に似合わぬ母親の愛を追い求める幼児体験の名残のようでもあり、微笑ましささえ感じます。

一歩間違えれば、変態的な一人の男性の性癖を描いた映画になりかねないところですが、まるで抵抗も無く楽しく見てしまった原因は、どうやらこういうところにあったようです。

思えば女性の脚は、他の体の部分に比べて、年齢による衰えとは比較的無縁の場所です。必ずしも全員が若いとも言えない登場する多くの女優さん達の脚のみならずプロフィールまでもが大変美しく撮られていた事は印象的でした。美しい脚をずらりと並べてみるという発想は、観客の度肝を抜く効果があっただけではなく、売り出し中の若い女優さんとともに、全盛期を過ぎた年齢の女優さん達にとっても願ってもない好企画だったのではないでしょうか。

(ただの脚フェチ映画ではなかった 2011/6/1記)
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