真田ピロシキ

独立愚連隊の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

独立愚連隊(1959年製作の映画)
3.2
今の日本では戦争活劇というジャンルを作るのはかなり難しいと思う。一にはアメリカなんかと違って第二次世界大戦以後は戦争を経験してないので実体験がなく、もう伝え聞いた戦争映画のフォーマットを踏襲するしかないのがある。二にはなまじ湿っぽくない戦争映画を作ろうとしても歴史修正の右傾化が甚だしい今では某アニメ映画みたいに耳障りの良い戦争映画として都合良く消費されてしまう危険性がある。映画の幅は狭まっている不幸な時代だ。

本作は1959年公開。監督・脚本は軍属中に終戦を迎えた岡本喜八。しばらく見てて意外に思うのは交戦シーンがないこと。馬に乗ってる最中に爆弾を落とされたりはするが敵機の姿は映されない。そこで描かれるのは死んだ士官を巡るミステリードラマ。その真相はやはりというか軍に殺されたというもの。愚連隊を捨て駒にして憚らないのもあって日本軍が友軍を殺そうとしている姿がハッキリ描かれている。このように日本軍を悪役にしているので軍に批判的だったという岡本喜八の映画として筋が通っていると思ったし、敵としての中国軍を映さなかったのも大いに納得。…してたんだけどクライマックスで愚連隊と真っ向から交戦させて意図が分からなくなった。この結末は愚連隊に死に花を咲かせてやろうとでも言ってるかのような無意味な死だったし、物凄い兵力差があったのに主人公を除いて双方に死体の山が広がっているのも荒唐無稽すぎて興醒め。80年代ハリウッドアクションみたいだったよ。時代を先取りしてたと言えなくもないか。

終わってみるとややガッカリな映画であったが、ラスト直前までは戦争映画でも辛気臭くないミステリーが出来るんだなと感心したし、最初から新聞記者には見えない主人公の好漢振りもあって概ね楽しく見られる。馬賊との友情も熱い。軽快なストーリーに合わせて演出もテンポ良く、鋭いカット割は昔の映画でありながら退屈しません。特に馬賊から複数の銃で狙い付けられる所はカッコ良かったね。