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白雪姫と鏡の女王のNMのレビュー・感想・評価

白雪姫と鏡の女王(2012年製作の映画)
3.0
アーミー・ハマーといえば『君の名前で僕を呼んで』の好演が記憶に新しい。それにも惹かれて鑑賞。こういうコミカルな演技もするとは意外。

白雪姫の話が元だが、白雪姫と王子様の立場がほぼ逆転している。

白雪姫の継母である女王の語りからスタート。

意地悪で、王様が遠征先で消息不明になったのを気に、白雪姫を軟禁、贅沢し放題。
姫は息を潜めて大人しく暮らしていた。

どこかの王子様らしきハマー登場。森を冒険中。このあたりからコメディシーンが増える。
不思議なこびとの盗賊団にあっさり身ぐるみ剥がされて、半裸で木に縛られる。

18歳の誕生日、白雪姫は決心、一人城を抜け出し村の様子を見に行く。
森を歩いていると、縛られた王子を見かけ、縄を解いてやる。二人は一目で惹かれ合うが、ここは別れる。

白雪姫が村に着くと、人々は食べるものもなく、以前訪れた時とは雲泥の差で、その現状にショックを受ける。

王子は、女王のいる城へ到着。
若くて美しく国力もあるらしい王子を見て、女王は再婚を企む。

白雪姫と女王は、王子と国政を巡ってついに対立、白雪姫を城から追い出す。
森を彷徨う白雪姫が出会ったのは、王子を襲った七人の盗賊で……。


おとぎ話を、現代の視点から描き直す、またはそれを更に問い直す、という映画や小説等は最近増えてきた。

白雪姫は始めは常に半泣きのような雰囲気だが、突如城を抜け出したり、王子と堂々と会話できたりするのは、少し唐突に感じた。
短時間のメイドの説得だけでここまで決心を固め行動するのは不自然。ここの作り込みはゆるく、作品に気持ちが入り込むのを遅らせた。

王子は最初から格好悪い登場で、とにかく全て王子様がなんとかしてくれる、というよくある筋書きではないらしいと分かる。
作品はあくまで女性主体、主導権を握るのは白雪姫のほう。
物語はいつも王子が姫を救う、それがみんなの好みだからだ、といったメタ的やり取りも多い。

鏡の設定も面白い。
女王は鏡自体と話すのではなく、鏡の世界にいる、自分の分身である魔女と交渉している。
はじめ、鏡の中の方は真っ白い服を着ているし女王をたしなめるようなことも言うので、女王と対極の善なる存在なのかと思ったが、そうではない。
王との結婚のときも、白雪姫を追い詰めるときにも、代償とともに手を貸しており、結果誰をも幸せにしない。
彼女のお陰で、女王自身も魔法を使えるらしい。

王子は、小人とは戦わない、女性とは戦わない、と優しいようで見下してもいる。結果、いつも散々なことに。
白雪姫も王子を好きだが、キスしてあげる、と言う王子を突き飛ばし追い返す。王子にべた惚れして身を任せたりしない。

小人たちが盗賊になった経緯が切ない。
本作では、神秘的な存在というより、単に低身長な普通の人。
現実でもきっと、盗賊をしたり、村でなく森で暮らす人というのは、同じようなきっかけなのだろう。

最後の対決ぐらいまでは悪くなかったが、その後は蛇足に留まった印象。特に意味合いを感じられなかった。ラストが良くないと作品全体の評価が下がってしまい、本当にもったいない。
ラストに踊るのがほぼ白雪姫で、王子のほうが遠慮がち、というのは一貫性がある。

何々は弱いもの、だから守る、と決めつけるのは、短絡的だと改めて思った。
とは言え、本作では王子があまりにも無力に描かれており、男女逆にすれば問題解決という訳にもいかないとも思った。

ただ、それだけでは今はもう浅いと感じる。シンデレラや白雪姫はいかがなものか、という問いは長らくあり、それを映画にしたところで斬新さは特にない。
その場合やり玉に上がる作品は、原作とはかなり違う成形がされたものなので、分けて考えなくてはならない。

結局鏡の中の魔女は何者なのか、等の説明がないのは残念。本作はファンタジーではなく、あくまでコメディドラマ、ということだろうか。

白雪姫はみんなにスノーと呼ばれているが、スノーが名でホワイトが姓、という設定なのだろうか。

女王の側近役・レインはコミカルな役がとても上手い。はっきりとした分かりやすい演技をしてくれる。
彼が一旦虫にされみんなに厄介者扱いされたのも、何やら比喩的で印象的。

小人たちが登場した時、これは誰が誰だが分からないな、と思ったら、個性がしっかり分かれていて、最後には大体の性格が分かるようになったのは意外。

ナポレオン役・プレンティスが出ている作品は大抵好み。彼が出演すると、役も作品も記憶に残る。

見事な衣装を手がけたのは石岡瑛子。日本人初のグラミー賞受賞者。2012年没。

メモ
Puppy love……子犬ような恋、何も知らない若者が目上の上に憧れるような幼い恋のこと。
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